訪問者数で国内3位(2012年7月)を誇る靴のECサイト「ロコンド」代表取締役の田中さんが以前コンサルタントとして活躍していたマッキンゼーには、プレゼンのテクニックを磨くメソッドとして「エレベーターテスト」と呼ばれるトレーニングがある。「あらかじめ用意されていたプロジェクトのシナリオを読み、30秒以内で上司にプレゼンしなさいという研修です」と田中さんはいう。

エレベーターに乗っているわずかな間でも、クライアントへ自分の考えを明確かつ正確に説明できるようにという狙いから始められたものだが、「5分なら」といわれるよりもかなりきつい。そうした訓練を繰り返してきた田中さんだから、きっと時間的にタイトなプレゼンの場でも落ち着いて臨むことができるのだろう。

また、マッキンゼーのオフィス内では「So what?」という言葉がいつも飛び交っているそうだ。これは「何を意味しているのか」「一体何をいいたいのか」を問うているもので、それを繰り返し尋ねられているうちに自分の考えや主張の精度が高まり、クライアントに伝えるべき物事の本質的な部分が見えてくるようになるのだ。これらエレベーターテストと「So what?」の組み合わせによる日々のトレーニングを行うことで、あなたも「5分以内」という制約を難なくクリアできるようになれるのではないか。

ときには奇策が功を奏することもある。クリエイティブ・ディレクターでプレゼンの達人でもある1st Avenue代表のマンジョット・ベディさんは「思い切って話し言葉でのプレゼンをやめてみては」と提案する。

「たとえば、澄み切った青空の下にある緑豊かな山並みのビジュアルを目にすると、人は心地よい風や爽やかな音を自然と感じ、その印象は言葉以上のインパクトを持って受け止められます。5分という短い時間なら、話し言葉でのプレゼンよりもアピール度は高くなります」

【○】たった4時間の研修で売り上げが過去最高になりました。
【×】この製品の画期的なところは……。

プレゼン話し方研究所社長
吉野真由美
同志社大学卒業後、生命保険会社などを経て英語教育会社に入社。12年間連続でセールス上位入賞。2005年、プレゼン話し方研究所を設立し現職に就任。
 
ロコンド代表取締役社長
田中裕輔
2003年、一橋大学卒業後にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年1月、株式会社ジェイド(靴の通販サイト ロコンド.jp)の創業に参画。同年2月から現職。著書に『なぜマッキンゼーの人は年俸1億円でも辞めるのか?』がある。
 
1st Avenue代表
マンジョット・ベディ
1969年、インド生まれ。17歳のときに来日。2006年、1st Avenue設立。クリエイティブ・ディレクターとして多方面で活躍している。
(加々美義人、澁谷高晴、坂井 和=撮影)
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