私は、このソーシャル・ビジネスの概念を取り入れ、当社も自立型の社会貢献事業が提唱できないかと考えている。

現在も我々は、アフリカ・スーダンでマラリア治療に取り組むNPOや日本国内で産科医学生支援のために、SA(サービスエリア)のテナントと組んで収益の中から、年間2億円近くを寄付している。一方、ユヌス氏の活動は単なる寄付ではなく、その国に必要な事業に再投資し、ビジネスを通じて社会貢献するものだ。こうしたソーシャル・ビジネスを日本企業も学ばなければいけない。

もう一つ、映画で印象的だったのは、カストロと組んで、キューバ革命を成功させたチェ・ゲバラの人生を描いた「チェ28歳の革命」と、「チェ39歳 別れの手紙」の2作である。

彼は、アルゼンチン生まれの医師だったが、若い頃に南米を友人とオートバイで回って、様々な国で人々が搾取されている状態を見た。これは、何とかしなければいけないと思った時、カストロがキューバで独立闘争の仲間を募った。彼は、戦争で自身も負傷しながら他の兵士の傷を治し、戦争の指揮も執る。一兵たりとも見捨てない。また、大国の不当な搾取から大衆を守る。そうした彼の行動が大きな尊敬と人望を集める。

モハメド・ユヌスの自由と公正に加え、チェ・ゲバラの公正と博愛。この3つの精神(自由・公正・博愛)の上に立って、西日本高速道路の事業自身をソーシャル・ビジネス化できないかと考えている。

その意味では、必要な道路をできる限り早く、無駄なく造り、安全を100%確保するという我々の事業は、社会と密接な関係を保っている。道路事業では利益は上げられないが、民営化後のサービスエリア事業で利益を上げられる。

その利益を社会還元の財源として、サービスや施設の再整備に加え、通信販売、運送倉庫業、市中での商業などの事業で利便を顧客と社会に戻していければ幸いである。

(桐山秀樹=構成 鷹尾 茂=撮影)