輸出ビジネス成功のカギはBOT方式だ

台湾に新幹線を売ったときなどは、企業連合を組んで、商社が音頭を取った。しかし、こうした企業連合は売って終わりというケースが多い。

新興国に売り込みにいくと、「35年間のオペレーションまで含めて提案してくれ」などと超長期のアフターケアまで求められる。35年先のことなど簡単には確約できないが、中国あたりなら「やりましょう」と二つ返事で仕事を受注する。取ったもの勝ちなのだ。

しかし、真面目な日本人ビジネスマンは「35年」などと言われるとフリーズしてしまう。現場の裁量の限界を超えているから、意思決定に非常に時間がかかる。

主に新興国向けのインフラ輸出のビジネスモデルの一つにBOT(Build Operate Trans fer)方式がある。企業が資金をファイナンスして相手国に施設を建設、一定期間運営・管理して、利用料金などで投資を回収した後に相手国に施設の所有権を引き渡す、というやり方だ。最近はBOT方式を採用する日本企業も増えてきたが、それでもBOT的な付き合い方やファイナンスを求められると腰が引けてしまう傾向は否めない。世界化が遅れた鉄道のようなドメスティックな業界はなおさらだ。

日本の鉄道を強力な輸出産業にしていくためには、関連企業をコーディネートして総合力で売り込める人材、あるいはプロデューサー的な商社やコンサルタントの存在が不可欠だ。もっといえば、日本の私鉄を一代で築きあげた五島慶太や堤康次郎、小林一三のような構想力を持ったリーダーの出現を期待したい。

(小川 剛=構成 AFLO=写真)
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