なぜ接客にはマニュアルがつかわれるのか。ひとつの目的は「口を慣れさせる」というものだ。そして、同じ言葉を繰り返すことで、「つかい方」がわかる。「ありがとうございます」は、感謝にも皮肉にもなるのだ──。

「見えない相手」にもネクタイを締める

ドゥファイン社長 
恩田昭子氏

想像力――。テレマーケティング会社・ドゥファインの社長で、電話応対コンクール全国大会審査委員長を務める恩田昭子さんは、電話応対で必要な能力をそう語った。

「電話応対が対面のコミュニケーションと根本的に違うのは、相手の顔が見えず、様子がわからないこと。相手への配慮や思いやりがより必要です」

電話応対で有効になるのが、「クッション言葉」だ。たとえば、文具メーカーにノートの在庫について問い合わせる電話がかかってきたとする。電話に出たメーカーの担当者のほとんどは、すぐに型番を聞き返そうとする。恩田さんはいう。

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会話の印象を変える「クッション言葉」

「電話応対では、質問に対して質問で返すというやり取りになるケースが多いんです。すると事務的で冷たい会話になってしまいます。そこで型番を尋ねる前に『ノートをお探しなんですね。いつもお使いいただき、ありがとうございます』というひと言を挟む。とくに断りやお詫び、説明などいいにくいことを伝えなければならない場面では、相手の気持ちを推し量りながら話す必要があります。『クッション言葉』は、いいたいことをスムーズに伝えるための添え言葉ともいえるのです」

「申し訳ございませんが」「お忙しいところ恐れ入りますが」「大変申し上げにくいのですが」などのひと言もクッション言葉である。

「日本では、電話応対を軽視して自己流のままでやっている企業がとても多いのですが、1本の電話が会社の印象や評価を決めるケースもあります。何よりも相手と良好なコミュニケーションが取れなければ、ビジネスもうまくいきません。だからこそ、社会人になるとみんな敬語や言葉づかいを意識するようになるわけです。『クッション言葉』は、電話応対の基礎。多くの方々に身につけてほしいですね」