PANA =写真
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新駐中華人民共和国大使 丹羽宇一郎(にわ・ういちろう)
1939年、愛知県名古屋生まれ。名古屋大学卒業後、伊藤忠商事入社。98年に同社社長就任、2004年より10年まで取締役会長。06年~08年、内閣府経済財政諮問会議議員を務めた。10年6月、中国大使に任命された。


 

7月末日に新駐中国大使が北京に着任する。元伊藤忠商事社長の丹羽宇一郎氏だ。大国における初の本格的民間大使であり、民主党連立政権の目玉人事の一つである。

「中国ビジネスにも精通した大物経済人の起用により日中経済関係がより緊密になる」と期待の声がある一方で、「経済利益優先で国家主権が絡む交渉では中国の言いなりになるのでは」との懸念も強い。本人は「日中FTA(自由貿易協定)を締結させる」と意欲を公言するが「東シナ海ガス田開発など敏感なテーマが山積する中国の大使が民間に務まるなら職業外交官などいらない」という不機嫌な声が外務省あたりから聞こえてくる。丹羽氏が地方分権改革推進委員会委員長を務めた当時、省庁の抵抗にあった苦労を知る人は、外務省との摩擦を心配する。

1962年に伊藤忠商事入社。68年から9年間米国に駐在した。社長時代に4000億円近いバブルの負の遺産の特損処理を決断、翌期に黒字を叩き出した伝説的経営者でもある。「決断力、説得力、交渉力、何をとってもすごい。年間150冊の本を読み、東西の古典に通じる博識で、講演原稿も本も自分で全部書くバイタリティがある。でも欲がなく、金は酒と本にしか使わない」とはかつての部下の人物評だ。北京市経済顧問なども務め中国財政界とのパイプも太い一方、米国通でもある清廉の士は、中国にとって外務省チャイナスクールより手ごわいかもしれない。

7月1日に東京で行われた名古屋大学同期卒の有志らによる壮行会の席で「誰がやっても傷だらけになるなら俺がやればいい」と、この人事を引き受けた心境を語った。だが、毀誉褒貶の渦巻く中で民間大使ならではの実績が示せれば間違いなく、日本外交に風穴をあけるキーマンとなろう。

(PANA=写真)