業績が高いだけでは昇進できない

【食品】昔の課長は連結ピンの役割だった。上と下の間をつなぐことができれば優秀な課長と言われたものだ。だが今はトップが意思決定するのでは遅すぎるという時代。しかも上はざくっとした絵しか描けないから、それをちゃんと絵にして下を引っ張っていく役割が課長に求められている。その意味では経営者精神のある人であり、昔のように降りてきた仕事をマネジメントするというだけの課長では務まらない。

【金融】もちろんプレーヤーとしての業績がよくなければ候補にも挙がらない。ただし、業績が高いことで自信過剰になり、周りにも同じような成果を出すことを期待し、叱咤するだけでは組織を動かせない。柔軟性を持って現場の社員とコミニュケートできるか。また、自分の欠点を謙虚に認めることができるかというポテンシャルを課長昇進の基準に据えている。

【IT】課長や部長になるには基本的には業績を挙げていることが大前提だ。課長の仕事として大事なのは最後は部下の尻ぬぐいができるかどうかだ。たとえば期日までに資料をつくらないといけない場合、部下が病気で休んだら課長自ら資料をつくれないとダメだ。

【流通】この数年人事部内では、人を判断する場合は表面を見るのではなく面積で見るようにと言い始めている。短期的な業績の善しあし、今の職場における評価だけではなく、どこに配置しても同じ職責が果たせるような行動と成果の再現性が高いかどうかを見ている。たとえば業績の高い部署で力を発揮して、業績が悪い部署でも同じような働きができるかだ。

【広告】マネジャー昇進の最大の要件は、人望があるかないかだ。すばらしい業績を挙げても、報酬では報いることがあっても人望がなければ絶対に昇進させない。昇進候補者が各事業部から上がってくると、人事部が直接面談して判断している。昇進させないと判断すれば、部門長に「彼自身にとってもマイナスとなる可能性があるので時期尚早」と具体的に説明している。

【金融】昔は実績をベースに登用していたが、それに加えていかに組織力を向上させることができるかだ。今は正社員もいれば契約、派遣、外国籍の社員もいる。それぞれ会社に対する向き合い方が違うし、単に「会社のためにがんばろう」という掛け声だけでは職場を束ねられる時代ではない。目標達成の旗振り役の課長はいらない。

【IT】課長になるタイプというのは、若いときから一つ上のポジションを夢見て、課長になったらこうしたいとか、部長になったらこうしようとか、上司を見て考え続けている人が多い。各部門長には係長から課長に推薦する際は「すでに課長の仕事ができている人を出してくれ」と伝えている。昔のように課長をやらせてみようかという曖昧な基準で選ぶことはやめている。

【精密】人柄、資質的に課長になれないタイプというのは、コツコツ真面目にやっていればいつかは認められると思っている人。僕から言わせれば「無能で真面目なやつ」はいらない。間違ってもいいから自分の意見を持ち、訴える力のある人でないと課長になるのは難しい。うちの会社では、これをやりたいと言えば、やってみればという社風なのでそういう人間が出世していく。

【広告】課長になれない、課長になっても降格される人というのは一言で言えば組織運営のパフォーマンスが低い人。部下や後輩との信頼関係が築けない人、横や斜めの組織との連携が悪い人。構想力に欠ける、自分で目標を描けない、外部の環境を把握できない、そしてヒューマンスキルに欠ける人だ。

【食品】降格させる場合の判断はなるべく定量化してチェックしている。人事評価のオフィシャルな情報以外に、部下や同僚、上司が本人をどう評価しているかという「多面評価」と「ストレス診断」、それと職場の「残業時間」の3つを加えて判断している。毎年組織のストレス度を調査しているが、多面評価とストレス診断を掛け合わせると、その部署の長がどんな人で職場がどんな雰囲気なのかが大体わかる。どうも点数が低いなと思えば、ヒアリングをしてみて、悪い結果が出れば降格させる。それから残業のコントロールができているかどうかを見る。少なくとも部員の平均で50時間を超えていればアウトだ。