「女性ならでは」から「自分ならでは」へ

僕は2年半前に愛知県の三河地方に自宅を移しました。製造業と農業が盛んな地域なのでフリーライターは目立ちます。地元の経済団体から「東京出身のライターから見た東三河の魅力をテーマに講演してほしい」なんていう依頼も受けました。僕は埼玉出身なので「東京人ならではの」なんて求めれても困ります、とちょっとは思いましたよ。

でも、断りませんでした。新しい地元でいろんな人たちと知り合いになれる機会ですからね。講演自体はすごく緊張してしまって失敗でしたが、経済団体の事務局の人たちとは信頼関係ができ、今でもいろいろ教えてもらっています。

職場で「女性らしいセンスで」「女性らしいアイデアをお願い」などと言われるなんてチャンスです。女性社員が過半数の百貨店や化粧品などの業界だったら、間違ってもそんな大雑把な括られ方で存在感を発揮できません。

上司の顔さえ立てれば、好き放題にやれる可能性が高いと思います。あなたが女性だからという単純な理由で「女性らしい」企画を求めてくる上司は、はっきり言って何も考えていないからです。女性らしさなんて無視して、骨太かつ雄渾な企画をぶつけてしまいましょう。

「えっ!? これをやりたいの? 今どきの若い女性はこんなことが好きなのか……」
「そうなんです。さすが部長は女心がわかってますね!」

性別は、学歴や職歴などと同じく僕たちの個性の一つであり、武器にもなり得ます。下品にならない程度に「使えるものは何でも使う」と割り切ると少し強くなれますよ。いろんな人に様々な角度から仕事を求められ、夢中で応えているうちに、いつの間にか「自分ならでは」の働き方をしていることに気づくのではないでしょうか。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/