──それでも出場する魅力とは何でしょうか。

【白石】やっぱり地球そのものを相手にできる、というのが僕にとっては魅力なんです。いつも危険と隣り合わせだからこそ、生きているということをダイレクトに感じられるということもありますね。またもちろん、大自然の中で、ほかではできない経験もいろいろとさせてもらっています。

例えば、赤道付近には、その名のとおり赤道無風帯というのがあって、まったく風が吹かないべた凪の状態になることがあるんです。そうすると、海面が鏡のようになって自分の顔が映るくらい。夜になるとそこに満天の星が映り込んみ、360度どこを見渡してもキラキラ輝いて……一度見たら、忘れられません。

そのほか、それぞれの港には仲間がいるし、世界を巡ってさまざま文化に触れることもできる。ヨットの魅力は、数え上げれば切りがありませんね。

「大胆なことを慎重に」
が成功の秘訣

──ところで、今回はパナソニックの「5枚刃ラムダッシュ」を試用していただきます。白石さんは、レース中もヨットでヒゲを剃ると聞きましたが、本当ですか。

【白石】本当ですよ。何ヶ月に及ぶレース中、毎日剃ります。欧米の選手は、ヒゲはヨットマンの象徴の一つだと思っているところがあるので「なんでコージローは、ヒゲを伸ばさないんだ」と聞いてきますけど、そんな時は言うんです。「サムライはヒゲを伸ばさないんだ」と。実際シェービングは、先ほど言った「常に自分自身をベストな状態に保つ」ための手段の一つ。僕にとっては、“やるべきこと”なんです。心身の準備を整えることが目的ですが、ほかにも理由があります。

例えば、レース中に、船底などで何かトラブルが発生すれば、水中メガネを付けて自分で修理に行かなければなりません。そのときヒゲが伸びていると、そこから水が入ってきて困るんです。だから、水中メガネと肌の間にすき間ができないようにしっかり剃ります。

──それでは実際に、5枚刃ラムダッシュを使っていただき、感想をお願いします。

【白石】あっ、肌触りがすごくいいですね。とてもなめらかで快適です。僕はヒゲが濃い方ですが、しっかり剃れています。それに時間が短くて済みます。ヘッドの面積も適度に大きいので、一気に剃れる感じです。すべるような剃り味でも、しっかり深剃りできるのは、ヘッド部分の肌への密着度もポイントなんでしょうね。アゴの下など、いろいろな場所にあてても、ヘッドが前後左右に動くから肌との間にすき間ができません。

──内刃や外刃、リニアモーターなどにさまざまな先端技術が生かされた5枚刃ラムダッシュですが、そうした技の部分についてはいかがでしょう。

【白石】5枚刃ラムダッシュには“日本でしかつくれない”というキャッチフレーズが付いていると聞きましたが、「なるほどな」と思いますね。先ほど言ったとおり、外国の文化やものづくりに触れる機会も多いですが、そこで感じるのは、「やはり日本人というのは、繊細で慎重なんだな」ということです。一つには、豊かな四季がそうした感性、感覚を育んだんだろうと思いますが、部品一つ一つ、細かいところにまでこだわって、それを丁寧に製品に組み上げていくんですね。

──ご自身の中にも、日本人らしさを実感されることはありますか。

【白石】そうですね。はじめに、1マイル1マイル積み重ねた先にゴールがあるという話をしましたが、何万マイルある世界一周も1マイル1マイルの集まりである。そういうふうに考えるのは、ある種日本人的といえるかもしれません。世界一周というのは、確かに大胆なチャレンジですが、ゴールするにはやはり地道さや慎重さが欠かせない。僕はそう思っています。

きっと、ラムダッシュの開発陣も「これまでにないシェーバーをつくろう」という大きな目標を立て、あとはそれに向かって、一歩一歩緻密な努力を重ねていったに違いありません。冒険も、ものづくりも、心・技・体を整えて、大胆なことを慎重に──これが成功の秘訣でしょう。