顧客満足度を高める「お客さま中心主義」

ただし、日本の市場で支持していただくためには、単に選択肢を増やすだけでは不十分だと認識しています。業界の今後数年間の成長率は1桁の前半と予測されていますが、当社は既存のお客さまをしっかりフォローしつつ、新規のお客さまを獲得することで業界平均を上回る成長を目指しています。スマートフォンや車と違い、保険は加入後すぐに何らかの実感を得ることができる商品ではありません。保険とは、将来お客さまに万が一の事があり、保障を必要とする時にサポートする役割を担っています。ですから私たちは、保険はお客さまとの将来にわたるお約束だと考えています。つまり、長期にわたってお客さまの信頼にお応えすることができて初めて、お客様のご期待に沿うことができるのです。

そうした心構えの部分を社内に根付かせるために、メットライフ生命ではいくつかの変革に取り組んでいます。一つは、報酬規程を改定し、代理店やコンサルタント社員が新規契約の販売と共に、既存のお客さまへのフォローを強化することを推奨する体系にしました。この取り組みの結果、現在の継続率は私たちが日本でビジネスを開始して以来、最も高い水準にあります。

もう一つの事例としては、ご加入時とご加入後にお客さまの満足度を、当社がグローバルに取り組んでいるカスタマーセントリシティ(お客さま中心主義)の指標を用いて調査し、改善を積み重ねています。当たり前のことですが、満足度の高いお客さまは多種目の契約に加入され、長期に渡って契約を継続してくださる傾向にあり、まわり巡って収益に好影響をもたらしてくれます。

メットライフ生命はお客さまの個別のニーズに柔軟に対応すべく、新しい取り組みやサービスの改善を実施していますが、日本の伝統的な「おもてなし」から学ぶことも多くあります。例えば、旅館では何かをお願いしようとする前に、スタッフの方は私の求めているものが何かを察してくださっていると感じました。私を思ってくれる心を感じたのです。このお客さまを思う「心」こそが、必要とされる時に率先してお約束を果たす生命保険会社の使命に他なりません。

さらに当社では、保険ビジネスでもビッグデータのような先進かつ革新的な技術を活用する事により、お客さまのニーズを事前に察知して、その情報を当社のコンサルタント社員や代理店に提供すること、そして、お客さまとの関係をより深めることができないかとも考えています。この話題については、改めてこのコラムで触れさせていただきたいと思います。

メットライフ生命保険株式会社 代表執行役 会長 社長 最高経営責任者
サシン・N・シャー

1967年生まれ、米国出身。米国スティーブンス・インスティテュート・オブ・テクノロジー卒。99年メットライフ入社。2011年アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニーリージョナル専務執行役員、12年メットライフアリコ代表執行役専務最高執行責任者などを経て、13年8月から現職。
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