80人中、2人だけ

秩父鉄道 列車区 廣井綾子さん

私が運転士をしている秩父鉄道の有名な区間に、荒川橋梁という橋がかかる上長瀞駅-親鼻駅間があります。

レンガ造りの橋脚が並んでいる赤い橋で、運転席から見る長瀞渓谷の風景が私はとても好きです。橋がだんだんと近づいてくると、ちょっとレールが狭く見えるくらいの高さでちょっとドキドキして、まるで空を飛んでいるような気持ちになるんです。

この橋からの眺めは綺麗で、これからの季節なら紅葉で山が色付いて来るし、雪が降れば辺りが一面に白くなる。大雨が降ったときは川が増水していることもあるし、夏になるとキャンプをしている人たちの姿が見えて、「今日は賑わっているなあ」なんて思いながら通過しています。ライン下りの舟がちょうど通っていくときもあるんですよ。

ただ、私がそんなふうに運転席からの景色を楽しめるようになったのは、ここ最近になってようやくという感じですね。この仕事はお客様の命を預かり、同時にたくさんの規則を守りながら時刻表通りに電車を走らせなければなりません。やっぱり日々の運行の中では事故が起こったり、電車や機器が故障したりすることもあるので、新人の頃は特に緊張の連続でした。

今年、秩父鉄道は秩父地域開通100周年を迎えました。いま運転士は80人近くいるのですが、その中で女性は私を含めて2人です。もう1人の女性運転士と私が、女性として初めての運転士になったのは5年前のことでした。