萩野公介(東洋大学・平井レーシングチーム) 

はぎの・こうすけ●1994年生まれ、栃木県出身。0歳のときに水泳を始め、小学・中学・高校と各年代での記録を次々と塗り替える。2012年のロンドン五輪では、400m個人メドレーにて高校3年生にして銅メダルを獲得。2013年、東洋大学に進学。これを機に北島康介選手や中村礼子選手を育てた平井伯昌に師事。2014年のアジア大会では、200m自由形、200m自由形リレー、200m個人メドレー、400m個人メドレーの4冠を達成した。

仁川アジア大会が閉幕した。大会の「顔」は、7個のメダルを獲得した日本競泳の萩野公介(東洋大)だった。閉会式での最優秀選手(MVP)の表彰式。ブレザー姿の萩野はメインステージで金色のトロフィーを掲げ、顔をくしゃくしゃにした。

「まさか、自分が(MVPを)いただけるとは思っていなかった。ビックリです。たくさんの方々に感謝の気持ちを伝えたい」

日本のエースの好感度はどうだろう。レース後のミックスゾーンでは韓国の記者も感心する。「さわやかな笑顔。明快な語り。理想的なロールモデル(手本)ですね」と。

200m自由形では、韓国の英雄、朴泰桓(パク・テハン=韓国)、五輪メダリストの孫楊(中国)を破り、金メダルを獲得した。レース後の萩野のコメントが奮っていた。

「2人と競えることがうれしくて、笑顔でレースに臨んでいた。いい経験ができた」

とくに朴泰桓とはライバルとして親しくなったようだ。レース後の表彰式では、「おめでとう」と声をかけられた。

「レース以外のところで、朴泰桓の人柄に触れて、素晴らしい選手、素晴らしい人間だと感心した」

萩野は今大会、金が4つ、銀が1つ、銅は2つと泳ぎまくった。ハードスケジュールながらも、“鉄人ハギノ”は挑戦を楽しんでいる趣がある。MVP受賞会見。

「自分は大舞台を楽しんで泳ぐことを決めている。素晴らしい選手と泳ぐ機会はそう、何回もない。それを緊張で楽しめないというのはもったいない。楽しんで泳ぐことが一番力を発揮する方法だとおもう」

2012年ロンドン五輪の男子400m個人メドレーで銅メダルを獲得。16年のリオデジャネイロ五輪ではメダルを幾つ取るのか?とメディアから聞かれると、萩野は苦笑いをつくった。

「現段階ではわからないが、今より実力が上がっているのは間違いない。世界記録を目指してがんばりたい」

日本選手のアジア大会MVPの受賞は2002年釜山大会の競泳の北島康介以来。北島は、そこで世界記録を出して、2004年アテネ五輪で二冠に輝いた。

萩野も仁川アジア大会の活躍を糧に飛躍がかかる。海外に練習拠点を移す可能性もある。萩野の行く末は、北島の軌跡とだぶる。

20歳の萩野は言う。

「きつい練習もあるが、水泳を楽しめているのは平井(伯昌)先生のお陰。平井先生の元で、人間としても成長していきたい。2年後のリオ、6年後の東京五輪につなげたい。北島さんのように、みんなから慕われ、選手としても、人間としても、尊敬される選手になることが目標です」

このアジア大会をステップにどこまで成長していくのか。スポーツファンにとっての楽しみがまたひとつ、増えた。