40歳までに磨いておくべき能力とは

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ミドルの危機の背景と対策

もう一つは、自分が今いる会社を離れても、一生食っていけるためのいわゆるポータブルな能力を理解し、整理することである。ただ、ここで間違えてはいけない。ポータブルな能力とは、プレゼンテーション能力やパソコンスキル、語学などではない。これらはある意味では社会人基礎力に近いものであって、これがあれば人材として、一生食っていけるものではない。

たとえ、生きがいは仕事以外だと結論づけたとしても、やはり仕事をしないと人間は生きていけない。だから、自分で食っていけるための能力を身につけるのである。よく言われる、手に職という考え方である。

ただ、同時に「手に職」論は、ホワイトカラーには向かない議論だとも言われる。ホワイトカラーの場合は、例えば、営業力、構想力、実行力など、職場で成果を出すための能力であろう。40代まで時間があれば、そうした能力を磨いておく。本当のポータブルな能力とはこういう能力をいうのである。人材輩出企業であるGEやリクルートの人材が他社に買われていくのは、プレゼンの上手さや、パワーポイント資料の綺麗さが理由ではない。事業を構想し、また人をまとめて成果を出す実行力に優れているからである。

そして、企業側にお願いしたいのは、人材の不活性化を問題視してほしいということである。40歳前半まで一所懸命能力を高めてきた人材を飼い殺しにして、活性化されない有能な人材として放置することは、会社にとって大きな損失である。社会的な無駄と言ってもよい。

そのためには、そうした人材が能力を活かし、幸せに仕事生活を歩んでいける場所をつくり出すことが必要だ。もしかしたら、企業内では難しいかもしれない。企業内で難しいならば、ほかの場面へ移ることをある程度のお金をかけて支援することも必要だ。社内・社外を問わず、働く人が自分のキャリアを活用して、意味ある人生を生きる道を見つける支援をしてほしい。それが、新たな雇用責任なのである。

(平良 徹=図版作成)
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