「次の仕事を見つけるのはとても難しいのではないか」と不安を抱く森本さんは、新聞に掲載された幼子を抱く若い女性の写真を目にする。

関西学院大学が主催する「再就職・起業を目指す女性のためのハッピーキャリア支援プログラム」の新聞広告である。約半年間、英語や会計などを学びながらキャリアを見つめ直し、協力企業でインターンシップを行う。受講料は約9万円から。だが今回は国からの助成により無料で受講できると書かれていた。

子育てをしながら勉強ができる。仕事復帰に対して不安を感じる森本さんの目には、とても魅力的に映った。しかし、プログラムが始まると、すぐに3年半のブランクを痛感する。

「パワーポイントを使った経験はありませんでしたし、ワードやエクセルのバージョンが変わっていて提出課題を作成するだけでも手間取りました。子育てや家事を続けながら多くの課題に取り組まなければならなかった。挫けそうな瞬間もありましたが、夫や両親が協力してくれました。座学だけではなく、グループワークが大きかったです。たとえば、数人のチームで新商品のプランについて議論を重ね、企画発表をする。チームの仲間は大企業の管理職や起業家志望の方など、同性でもこれまで接点のない人たち。様々なキャリアのあり方を知ることができ、大きな刺激になりました」

経営業務管理責任者の資格を取得した森本さんは、インテグラル・テクノロジーで働きはじめる。そして1年前には、パートスタッフから念願の正社員になった。

生き方、働き方は、多様にある――。森本さんはいま「外に目を向け、一歩踏み出したことで、そこに気づくことができた」と実感しながら仕事と子育てを両立させている。

(遠藤素子(田中さん)、森本真哉(森本さん)=撮影)
【関連記事】
「ワーママ」は毎日が綱渡りでも幸福度が高い理由
出世と出産の二兎を追う2つの方法
なぜ、一般職を希望する女子大生が増えたのか
育児は、何百万円のリーダー研修の価値あり
復帰後に「パート勤務」を打診されたら?