2014年10月17日(金)

「表現してナンボやろ」-小畑江至

コーチの名言+PLUS—闘う者を磨く「ことば」の力【第107回】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
松瀬 学 まつせ・まなぶ
ノンフィクションライター

1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書は『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)など多数。

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松瀬 学=文と写真

小畑江至(湘南ベルマーレ・ラグビーセブンズGM)

おばた・こうじ●1969年、京都府生まれ。中2でラグビーを始め、東山高校―龍谷大でラグビー部に所属。卒業後、公立高校の教師となり、ラグビーのコーチとして、中学生、高校生を指導。その後、国内で数少ないプロコーチとして本田技研工業ラグビー部(現ホンダヒート)と契約。専大、栗田工業などでも指導。ことし4月、湘南ベルマーレラグビーセブンズを発足させ、GMに就く。妻との間に一男一女。

成田国際空港そばの成田市の公共スポーツ施設。7人制ラグビー(セブンズ)の日本代表男子の取材に出かけたら、思わぬ出会いがあった。情熱の塊、ラグビーコーチの小畑江至がいたのだ。

ことし発足した『湘南ベルマーレラグビーセブンズ』(通称Bell7)のゼネラルマネジャー(GM)をしている。なぜ、ここに? と聞けば、人懐っこい笑顔をつくるのだ。

「やっぱり、代表チームの練習を見たいし、知りたいじゃないですか。かつて教えた三木(亮平)がどうしているのかを見たかったものありますが、何かを吸収させてもらって、自分のチームや日本ラグビーに還元できればいいな、と思っています」

好奇心旺盛なのだろう。日本協会の許可を得て、先日はセブンズの日本代表女子の練習をのぞきに行った。朝4時半から、エディー・ジョーンズヘッドコーチ率いる15人制日本代表の早朝練習にも見学にいった。

代表チームに限らず、トップリーグのチームの練習も勉強しに押しかける。この向上心。この探究心。この行動力。

座右の銘が、本田技研創業者の本田宗一郎氏のコトバ『得手に帆あげて生きよ』である。

「自分の好きなことを見つけ、それを究めていくことがイチバン大事だという意味です。好きなことをやっていたら、厳しいこと、イヤなことも、乗り越えられるのです」

京都府出身の45歳。中学時代にラグビーと出会い、チャレンジングな楕円球人生を歩んできた。東山高、龍谷大で主にフランカーとして活躍。卒業後は公立高校の教師として社会科を教え、高校ラグビー部から本田技研工業ラグビー部(現ホンダヒート)、専修大、栗田工業などでラグビーを指導してきた。

日本ラグビー協会の「リソースコーチ」やIRB(国際ラグビーボード)の「コーチングエデュケーター」も務めてきた。

「日本代表に強くなってもらいたい」「日本に夢を追えるようなクラブ文化を根付かせたい」と思えばこそである。

その延長線上にBell7がある。昨年10月、海が好きだから、湘南ベルマーレスポーツクラブにラグビーチームの創設を持ちかけた。小畑の熱意が同クラブの理事長に伝わり、苦しい財政状況ながら、Bell7が誕生されることになった。

「コンセプトは、学校の進路とか、就職にとらわれない、みんなが入れるようなクラブチームづくりです。決して、企業スポーツや学校スポーツを否定しているわけではありません。あくまで子どもたちの選択肢を増やすことが大事なのです」

これまで、学校にラグビー部がないという理由で、進学に際し、ラグビーを断念する子たちを見てきた。ラグビーを続ける選手がもっと増えれば、日本のラグビーは強くなると信じている。老若男女がそれぞれのグレードでラグビーを楽しむニュージーランドや豪州などのクラブチームが理想であろう。

いまBell7には18歳から25歳までの10数人が登録している。報酬はない。楽しんでいるか、と小畑は声を掛ける。

「好きというだけで集まってきているメンバーですから。練習では、“一つひとつ考えて、思ったことを表現しよう”とよく、言っています。“表現してナンボやろ”って」

パーソナルトレーニングスタジオを経営し、NPO法人『アールラボスポーツアカデミー』も主宰する。スポーツマネジメントの勉強のため、ことしから慶大大学院にも通う。カネがない分、夢はある。いずれ日本代表のコーチになりたい、との野望もある。

「なれるかどうかはともかく、夢を見るのが大事なんですよ」

コトバは活力に満ちている。そう言い残すと、トップリーグのクボタの練習の見学のため、船橋に飛んで行った。でっかい夢を胸に得手に帆かけて生きるのである。

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