2014年10月10日(金)

会津っ子はデートで、必ずカレー焼きそばを食べる。

どうしてこんな食べ方を? 不思議カレーの噂[2]

dancyu 2012年8月号

文・山内史子 撮影・工藤睦子

「トミーフード」のカレー焼きそば

「カレー焼きそば、知らないの?」

一緒に飲んでいた会津っ子が、驚きの声をあげた。聞けば、焼きそばにカレーをかけたものだとか。発言から察するに、会津ではおなじみの存在らしい。カレーも焼きそばも大好物だが、合わせるなんて発想はなかった。考えたら気になって眠れなくなり、会津若松の「トミーフード」へと急行。昭和50年創業の、カレー焼きそばの元祖である。

カレーをまとった焼きそばを、まずは一口。カレーでもない、焼きそばでもない。双方が見事に融合した新たな世界……おいしい~! がっつり系を予想していたが、意外にも優しく和む味ではないか。

豚挽き肉入りのカレーはピリッと辛さが立ち、コクがある深い味わい。隠し味の豚骨スープと、各種スパイスが映えている。キャベツ、もやし、人参が具となる焼きそばは、あっさり軽快。主人の佐藤真司さん曰く、すべては合わさったときのバランスを考えてのことだと。カレーの量も、多すぎてはいけない。一見、家庭でも簡単にできそうだが、実は絶妙な計算が施されているのである。

でもって、おいしいだけではない。カレー焼きそばが会津っ子、特に30代、40代の間で愛されているのは、甘酸っぱい思い出とともにあるから。かつて「トミーフード」は、スーパーに隣接したスタンドだった。ファストフード店がまだない時代、そこは学校帰りの少年少女たちのたまり場に。その際、男子はカレー焼きそばを注文する一方、女子はミートソースがかかったオシャレな“ミート”を選んで、ボーイ・ミーツ・ガール。

カレー焼きそばのS(そば1玉分)、目玉焼きとウインナーを追加。目玉焼きの黄身がとろりとルウと混ざり合っておいしさ倍増。

デートもまた「トミーフード」で。日本酒ファン垂涎の銘酒を醸す、某蔵元さんもその一人。高校生のときに初デートで食べたカレー焼きそばは、忘れがたい記憶だという。

後に経営者や場所が変わっても、味は引き継がれた。存続の危機に瀕したこともあったが、「トミーフードをなくしてはならない」という有志の尽力が実を結んで今に至る。会津ならではの情の深さが、カレー焼きそばを守ったのである。

最近では、カレー焼きそばをアレンジして出す店も増えた。カツのせ、野菜系、極太麺などなど、個性を打ち出したバラエティーに富んだラインナップなので、行脚するのも一興。会津の青春の美味、カレー焼きそばにぜひご注目を!

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山内 史子