「いっそ、もっと、輝こう。」──三井住友VISAプラチナカードのブランドスローガンを実践するかのように、新たな感動を追求する表現者がいる。一人は、100周年を迎えた宝塚歌劇団の演出家、小池修一郎。もう一人は、宝塚をはじめ時代のスターを撮影し続ける写真家、篠山紀信。そんな二人が、新しい表現を探り続ける原動力を語り合った。
──今年100周年を迎えた宝塚歌劇団の魅力とは何でしょう。
篠山紀信●しのやま・きしん
1940年生まれ。常に時代の先端を行く作品を手がけ、98年から『宝塚GRAPH』の撮影を担当。14年間、表紙やグラビアを飾り続けた。歌舞伎など伝統芸能に関する写真も多数。

【篠山】宝塚はトップスターが卒業し、新たなスターが生まれるという新陳代謝がうまくいっていますね。

【小池】先輩から後輩へ、宝塚の伝統をリレーしていくという意識をみんなが持っています。そして新しいトップスターが、時代に即した舞台をつくり上げていく。宝塚が100年続いている要因の一つはここにあると思います。世襲がないため、それぞれの役者が自分なりの表現を見つけ出すしかありません。伝統を継承しながらも、役者や演出家が常にオリジナリティを追求してきたことが、長い歴史につながっているのではないでしょうか。

【篠山】長く受け継がれてきた歴史と伝統がある宝塚において、小池さんが演出する舞台も常にクオリティが高く、マンネリにならずに新しいものを表現し続けていますね。

【小池】100周年を記念して5年ぶりに公演する『エリザベート』。これまで何度も演出していますが、いつも「ここを変えれば面白いんじゃないか」というポイントを見つけて、実際に変えています。そんなポイントを見つけるたびに、長年繰り返している舞台でも、新鮮な魅力を感じます。

【篠山】宝塚をはじめ、僕が撮り続けてきた歌舞伎もアイドルも、すべて虚構の世界の産物。そして写真もまた、現実の一部分を切り取る虚構でしかありません。でも虚構に虚構を掛け合わせることで、初めて生じるリアリティもある。それも、宝塚の魅力ではないでしょうか。宝塚のトップスターも、男や女という性別を超えた人格だからこそ、人を感動させることができるのだと思いますよ。

小池修一郎●こいけ・しゅういちろう
1955年生まれ。77年、宝塚歌劇団入団。96年、ウィーン発のミュージカル『エリザベート』で成功を収める。主な演出作品に『PUCK』『モーツァルト!』など。2014年、紫綬褒章受章。

【小池】確かに、宝塚の演目を生身で等身大の男女が演じようとすると、かえってやりにくいのかもしれません。宝塚が描き出すのは、究極の愛の姿。現実にはないかもしれないものを、現実にはあり得ない存在が演じるから、究極の愛がリアルに見えるのでしょう。

──お二人は、それぞれ自分なりの表現を実現するために、どんな視点を大事にしていますか。

【篠山】例えば役者であれば、決め顔をつくる直前や直後、そのほんの一瞬の表情にこそ、撮る価値があると思っています。予定調和はつまらない。被写体の気持ちになれば、その瞬間が自ずと分かるものです。

【小池】そういえば、和央ようかさんの写真集を撮影なさる際も、団員たちと一緒に踊って撮影していましたね。

【篠山】いい写真を撮るなら宝塚のスターたちにも密着しなければならないですからね。宝塚での仕事のきっかけとなったのは、真矢みきさんの写真集『Guy』の撮影でした。トップスターが、自由に撮影していいと許可を出してくれたのは大きかった。

【小池】男役を演じるトップスターが女性的な面を見せるなど、これまでにない写真集でしたね。まさに、「虚構の魅力」を訴えかける非常に印象的な作品だったと思います。