追加工事はしない業者の勧めに乗るな

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こんなに違う悪徳業者と優良業者

バリアフリー化を低予算内で収めるのに一番大事なことは、追加工事の誘惑に負けないこと。玄関をリフォームすると廊下もやりたくなり、廊下を直すと次に台所も直したくなるもの。そこでつい見積もりもとらずに追加工事を頼む人も多いのですが、費用が嵩む一方なので契約書以外の所は絶対に工事をしないこと。また、業者から追加工事を勧められたら断りましょう。実績があって評判のいい業者は、次の工事でスケジュールが埋まっており、仕事の段取りが狂う工事期間の延長を嫌います。

必要最低限のバリアフリー化をするのであれば、まずは段差をなくすことから手をつけます。全部の部屋の段差解消は大がかりな工事になるので、私が勧めているのは、ドアから引き戸に替えること。段差はなくても、わずか一センチの敷居のまたぎがあるだけで親指をぶつけ、躓く危険があります。また、トイレは内開きのドアが多く、脳卒中などで中で倒れると外から開けられなくなる。引き戸にするスペースがなくても、半分中に入る開き戸に替えられます。

戸建ての場合、車椅子のことを考えて玄関と玄関ホールを平らにしたいと考える人がいますが、スロープをつけると下るときに転がりやすくなり、かえって危ない。私は階段の1段分の高さ、20~25センチ程度の上がり框をつけるようにしています。上がるときはそこに座って靴を脱ぎ、クルッと回って手すりを持って立つのが、安全で楽な方法です。この手すりの位置は重要で、こうした細かい点でもバリアフリーのノウハウがありますから、そうした知識を熟知した業者選びが大切になります。

ところでバリアフリー化工事では、介護保険をはじめ、さまざまな公的援助を受けられる場合があります。介護保険の住宅改修費助成では要支援・要介護認定者に限り、20万円を上限に住宅改修工事費を受給できます。自治体ごとの助成制度もあるので調べておくとよいでしょう。

建築設計事務所「アトリエ雲」代表 竹岡美智子
ミサワホーム、西武百貨店スタジオカーサなどを経て、1991年、「アトリエ雲」を設立。NHK文化センター講師。家づくり、リフォーム関係の著書多数。
(建築設計事務所「アトリエ雲」代表 竹岡美智子 構成=吉田茂人)
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