2週間の納期を2~3日に短縮

鋳造はまず成型品の原型(木型)を作成、その回りを砂で覆って砂型を作る。成型品の内側が空洞ならば、中子という中に入れる砂型も作らなければならない。これらを組み立てて、最終的な砂型を作り、上から金属を流し込んで成型品ができあがる。この工程は昔から変わらぬ手間のかかる作業だ。

レーザー焼結積層装置。

ところが、3Dプリンターによる「3D砂型積層工法」を用いると、木型から砂型組み立ての工程を一挙に省き、プリンターから出てきた砂型を加熱処理して固め、金属を流し込むだけである。複雑な形状でも作ることができる。

「一世代昔は鋳物の納期は3~4週間が当たり前。いまでも早くて2週間です。ところが、当社では2~3日で納品できる。おそらく他社には真似できないでしょう」と小岩井。

従来の5分の1~7分の1も納期を短縮したのだから業界では革命的なことだ。だが、同業で追随する会社はなかなか出てこない。装置の価格が高いこともあるが、コイワイが独自に培ってきたノウハウもあり、簡単に真似できない。

同社では、特殊な加工を施した砂にレーザーを照射して硬化させ造形する「レーザー焼結積層工法」(レーザー工法)と、特殊な液体を砂に噴射して硬化させる「インクジェットプリント積層工法」(インクジェット工法)の2種類の装置を使用している。両方を持つ企業は国内ではコイワイだけだ。

前者はより精密に造形でき、後者は大型化できるメリットがある。コイワイでは縦180cm×横100cm×高さ70cmまで対応できるインクジェット工法装置を所有している。

レーザー工法装置は2007年に1台1億4000万円をかけて導入。翌08年にはインクジェット工法装置を買ったが、当時、自動車メーカーが数台導入していた程度で、不特定多数の顧客を相手に販売目的で導入したのはコイワイが初めてだった。

2012年には、金属部品を直接成型する「3D金属粉末積層装置」をスウェーデンのベンチャー企業から購入
した。金属パウダーに加速した電子を照射して成型するが、やはり1億4000万円と高額だった。

国内ではこの装置によるビジネスはまだ例がない。真空中で金属を溶かすため不純物が混ざらず、高密度で高品質の成型ができる。鋳造では難しかった複雑な形状が可能となり、すでに医療用インプラントの製造やロケットエンジン部品の試作を請け負っている。

この装置ではチタンやコバルトクロム材の成型品を作っているが、2014年には新たに「3Dレーザー焼結金属粉末積層装置」を導入、アルミニウム材でも可能となった。