市場(Market)は価格を通じて制約する。安くていいものなら買うし、逆に高くて悪いものは買わない。高くてもいいものは買うし、ただ高いからという理由で買う人もいる。コーヒーを飲みたかったり、車がほしかったりすれば、所定の代金を払わなければいけない。喫茶店でコーヒーを飲んで代金を払わないと窃盗罪が適用される。欧米の話だが、ウエイターにチップを払わなくても法は適用されないが、共同体の規範によって「ケチだ」と非難されたくなければ、チップを払うというようにその行動が規制される。

サイバー空間で威力を発揮するアーキテクチャー

さてアーキテクチャー(Architecture)である。

アーキテクチャーを技術による規制と考えれば、現実世界でもそのような規制はいくらもある。酔っ払い運転を防止するには、法の取り締まりを強化する、防止キャンペーンを展開する、罰則を強め罰金の額を上げる、などいろんな方法が考えられるが、運転席で酒気を感知したら自動的にエンジンがかからないように車を設計するというのがアーキテクチャーによる規制である。JRが非接触型カード、スイカ(東日本の場合、西日本ではイコカなどと呼んでいる)を導入したら運賃の不正乗車(きせる)が少なくなったが、これも技術による規制と考えていいだろう。

アーキテクチャーによる規制は、サイバー空間においてこそ、大いに威力を発揮する。IT社会においてはこのアーキテクチャーが、あるときは法以上に、あるいは法の実質代行として機能している。

法は明文化されているから、何をすれば罰せられるかがだれにもわかる。とくに刑法においては、明文化されていない罪で罰せられることはない(罪刑法定主義)。そうでないと、市民生活がおびやかされるからである。