日本経済は消費税増税の逆風を乗り切り、株価は再び上昇局面に入ったようだ。2020年の東京オリンピックを控え、各社、攻めの経営が目立つ。少子高齢社会のなかで、企業はどこへ向かうのか。新たに経営トップの座についた人物を解剖し、未来への展望を開く。

インドまでも視察に行く現場主義で勝負

旧三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)とつながりが深く、歴代社長を旧三和系から迎え入れてきたJCB。6月に就任した浜川一郎社長も旧三和銀行からキャリアをスタートさせた。銀行では主に企画・人事畑を歩み、統合という巨大プロジェクトも2度経験した手腕で、日本唯一の国際クレジットカードブランドをどう導こうとしているのか。

JCB代表取締役兼執行役員社長
浜川一郎氏
――銀行時代、印象に残っている仕事は?

【浜川】入行して4年目、ハーバードのビジネススクールに留学させてもらった。『競争の戦略』で有名なマイケル・ポーターの授業を受けられたことは、いい思い出。あのころ学んだ戦略論は、自分のベースの一つだ。

帰国後は企画や人事が長かった。頭取の秘書も経験した。秘書といっても、スケジュール管理するのではなく、頭取の指示で調査してレポートをまとめる仕事がほとんど。2人の頭取のもとで7年間やったが、経営者のものの見方に間近で触れられたことは、大きな財産になった。

印象に残っているのは、やはり統合だ。三和と東海が統合してUFJになったときは人事の次長、UFJとMTFGが統合したときは統合企画室長だった。統合はどちらか片方に寄せるとうまくいかない。両行の政策の中から、お客様にとっていいもの、銀行にとっていいものを冷静に選ぶことが必要。直接関わった人間としていうと、その点ではとてもうまくいったと思う。

――統合後は、リテールや営業部門も経験した。

【浜川】工場見学が好きで、取引先の現場によく足を運んだ。現場に行くと、日経新聞に書いてあったことが知識ではなく肌で感じられるようになる。インドでは、ある食品会社の営業についていってローカルの食料品店を一軒一軒回った。インドはまだ所得が高くないため、商品を小分けにしたほうが売れる。そういった工夫でビジネスが成り立っているということは決算書を見てもわからない。