2014年10月9日(木)

脳科学が証明、社会を動かす「言葉の力」

茂木 健一郎:世界一の発想法

PRESIDENT 2014年6月16日号

著者
茂木 健一郎 もぎ・けんいちろう
脳科学者

茂木 健一郎1962年、東京都生まれ。東京大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学博士専攻博士課程修了。理学博士。第4回小林秀雄賞を受賞した『脳と仮想』(新潮社)のほか、著書多数。

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茂木健一郎 写真=PIXTA
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私事で恐縮であるが、『茂木健一郎の脳がときめく言葉の魔法』(かんき出版)という本を出した。言葉には、実際に人生を変える力があると、私は考えている。

言葉が、人間の世界にどのように登場してきたかと考えると面白い。一つの有力な説は、会話は仲間どうしの絆を確認する「毛づくろい」の発展形として進化してきたというもの。お互いに毛づくろいする代わりに、会話を交わすことで、絆を確認するのだ。

人間の脳は、まるでマジシャンの手品のように、自分自身に幻想を見せる。(写真=PIXTA)

ところで、「言葉」には、「魔法」のような力があるということを、科学的な立場から説明すると、つまり言葉にはそれだけの「幻想」(イリュージョン)としての力があるということになる。

現代の脳科学においては、幻想には歴然とした現実感が伴うと考える。たとえば、「お金」や「愛」は確かに物質的な実体がない幻想かもしれないが、その幻想を通して、私たちは一喜一憂し、社会が実際に動いていく。

ハーバード大学の著名な研究者は、人間が自分の行動や選択を決められるという「自由意志」は、脳が作り出した一つの「幻想」であるという論文を書いた。

マジシャンが、この世では起こりえないことが起こっているかのような「イリュージョン」を生み出すのと同じように、私たちの脳は、自分自身に「手品」を見せる。そのトリックによって、自由意志や言葉の意味が作り出され、私たちの人生は影響を受け、時には一変する。

言葉は、脳の働きを通して、私たちが自分にかける「魔法」のようなものなのである。

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