「諸君。今日から君たちのオフィスはここだ。君たちはブロードバンドをやる!」

朝礼のとき、僕の第一声を聞いた社員はみな目がテン。そもそもブロードバンドという言葉さえ聞いたことがない人もいました。しかし遅々としたままの新事業を少しでも前進させるには、そうやってかき集めて「ヤフーBB」のプロジェクトチームを突貫工事でこしらえるしか道はなかったのです。

ブロードバンド実現には技術的にも大きな問題がありました。一般の電話回線を利用して、世界初の完全IPネットワークを独自にADSL回線で構築しようとしていました。

通常の方式より伝送容量が10倍も多く、コストは10分の1、コストパフォーマンスは100倍。その構築のために徹夜の連続です。土日も、盆も正月も一切休みなし。

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ブロードバンド環境の国際比較(2009年)

ほとんどの社員は朦朧として、風呂にも入れないような毎日。オフィスは“異臭”がしました(笑)。折りたたみの机や椅子も散乱して、ぐちゃぐちゃの状態。ほとんど歩けない状態です。

でも苦労のかいあって、理論的に正しかった技術が使えることを証明し、開通できたのです。それは革命的なネットワークサービスの始まり。歴史的転換点といってもいいでしょう。

当時のNTT東日本・西日本のADSLサービスと比べ、通信速度は最大で毎秒8メガ・ビットで5倍以上、接続利用料金はほぼ半額に設定(ADSL接続料、プロバイダサービス料の計で月額2280円)。まさに、「価格破壊」という言葉がぴったりでした。