【金森】牛丼業界には、いくつか気になる「お客から求められていないこだわり」があります。24時間営業はその代表格。「全店共通で24時間開けてます!」って声高に言っているけど、そんなこと求められてないんですよ。24時間営業が喜ばれたのは、それこそ「24時間働けますか」の時代。その時代は会社も「どんどん働け、残業しろ」って言ってましたし、僕自身も月200時間残業したりしました。

【唐仁原】でも、今は会社も「早く帰れ。残業するな」という時代ですよね。

【金森】そうなんです。だから、人口動態を見て、都市部の駅前みたいに夜中も必要とされる店は開ければいいし、ビジネス街や郊外店は閉めればいい。マクドナルドも臨機応変にやっていますから、牛丼屋もそうなるでしょう。

【唐仁原】「牛丼を食べる幸せ」みたいな本来の部分で楽しませてほしい。3社を比べると、やっぱりすき家はそこが少し独特な気がする。

【金森】今、すき家が店舗数ではトップなので、牛丼界ではリーダー企業のはずなんですよ。でも、すき家のメニューを見てもわかるように、非常にチャレンジングなものが多い。

【唐仁原】わかります。先日打ち切りとなった「まぐろのたたき丼」。「とろ~り3種のチーズ牛丼」とか、牛丼屋の発想ではないです。ファミレスに近い。

【金森】自分たちがリーダー企業だってことにまだ気づいてないんじゃないかな(苦笑)。リーダー企業になったら、率先してチャレンジする必要はないんです。フォロワー企業の成功例をシレッと模倣して、規模でねじ伏せちゃえばいい。そもそも、あれだけの規模の業態なのに、マーケティングがきちんとできていないのが問題。たとえば、吉野家のターゲットは「ザ・サラリーマン」。「牛丼」が食べたいコアなファンが行く店だから、チャレンジングなメニューは必要ありません。