米国防総省は、中国・海南島東方約217キロの南シナ海上空の公海で8月19日(グリニッジ標準時)、中国空軍のJ-11戦闘機が、通常の監視活動中だった米海軍対潜哨戒機P-8に約6メートルの距離まで接近、P-8の下方を通過後、機体下部のミサイルを見せつけるようにP-8の正面を横切り、威嚇したと発表した。

かつて2001年の海南島沖合で、中国海軍航空部隊所属のJ-8IIが米海軍EP-3E電子偵察機に接触、墜落したことがあるが、問題は今回も、自衛隊機への異常接近(5月24日と6月11日、東シナ海に中国が設定した防空識別圏内で航空自衛隊機と海上自衛隊機に異常接近)の際と同様に、空軍戦闘機だということである。

中国軍では従来、洋上の防空は海軍航空部隊、領土の防空は空軍というように任務分担が行われてきた。そのため01年の事件では、海軍戦闘機がスクランブル発進した。しかも南シナ海には防空識別圏も設定されていない。一方的かつ強引であるにせよ、東シナ海のように先に防空識別圏を設定してからであれば理解できなくもない。

しかし今回の事件は、その防空識別圏をも事前に設定することなく発生した。これは、南沙諸島が中国領であることを改めて主張するためではないだろうか? つまり、「南沙諸島の中国領空」を「防衛」するために空軍機が対応した……という仮説である。

それを裏付けるかのように、南沙諸島で中国の大規模軍事施設の建設が着々と進んでいることが判明した(8月28日NHK)。大型の対空レーダーも設置されており、フィリピン軍は今後、滑走路が建設されると見ている。

今回の中国の行動は、東シナ海での事案よりも、はるかにエスカレートしたものである。つまり、中国にしてみれば南沙諸島はすでに中国領であるため「中国の領空」が存在する。このため、関係国の反発が必至な防空識別圏を設定することなく、既成事実で南沙諸島の空を空軍力で実効支配しようとしているのではないだろうか? 今回の事案はその布石といえるのかもしれない。