拉致問題担当大臣招待の言葉を初めて引き出す

『闘魂外交』アントニオ猪木著(プレジデント社)

私ひとりが北朝鮮とやり取りをし続けても問題の解決にはなりません。やはり日本からも議員が直接乗り込んで、膝を突き合わせて話し合うことが必要不可欠なのです。

2013年11月の訪朝では、朝鮮労働党のキム・ヨンイル国際部長とも面会しました。日本の国会議員団の受け入れについて話していると、キム・ヨンイル氏から「古屋拉致問題担当大臣もおいでください」という言葉を引き出しました。拉致問題はお互い特にナイーブな問題です。その担当大臣も受け入れるということは、キム・ヨンイル氏個人の考えでできる発言ではありません。北朝鮮上層部の考えでもあり、日朝両国の未来について、対話を求めるメッセージだと私は考えています。

これはプロレスを通じて北朝鮮と交流を長年続けてきた私だからこそ引き出せた言葉なのだと確信しています。私が言うのもおかしいかもしれないけれど、今の日本人の中でここまでのパイプを築き上げることのできた人間は私しかいません。私は力道山の弟子だったということがきっかけで、北朝鮮での知名度もあります。言い方は悪いかもしれないが、日本政府は私を利用すればいいのです。せっかく作ったパイプです。交渉でもなんでも、私を利用すればいい。私は政府ができないことをやっているだけで、何も邪魔をしようとしているわけではないのです。外国の政府関係者からのコンタクトは山のようにあります。

この7年ちょっとの短い期間で、拉致問題担当大臣は14人も代わっています。拉致被害者のご家族の方々も混乱している。何がどう進んでいるのか? 何が問題になっているのか? 何が何だかわからないと。被害者のご家族にもお会いしました。「猪木さん、どうなっているのですか」と。

自分の国のことは自分で動く。当事者同士が膝を突き合わせて話し合うというのはそういうことなのです。確かに拉致問題は触れたくないと思っている人が少なくないのかもしれません。しかし拉致問題が日朝関係の障壁であることも事実です。それをわかっているのかいないのか、「北朝鮮の犬」だとか「二元外交」だとか私に言ってくる人がいます。何もしないで外から見ている人が好き放題言っています。昔の私ならば「だったらお前らがやれ!」くらいは言ってしまっていたかもしれません。

私が懲罰覚悟で訪朝することによって私にメリットは何もありません。リスクだけしかないのです。それでもやるのはそれが必要と思ったからです。闘魂外交の信念を懲罰を恐れて曲げるのは私らしくない。国会の嫌われ者になったって構いません。国民の立場から見た常識を背負って、必要ならばいつでも議員バッジを置く覚悟もできています。

「北朝鮮に利用されているんじゃないか」という声も聞きます。利用されている? 大いに結構。私が作ったこの道を通って、後に続く人が日朝関係の改善を果たしてくれればそれでいいのです。私も70歳を過ぎました。いつ倒れる日がきてもおかしくない年です。この先私がいなくなっても、北朝鮮との交流が途絶えないことを私は祈っています。

※本連載は書籍『闘魂外交』(アントニオ猪木 著)からの抜粋です。