付加価値を創造できるかがカギ

これは早急に直したほうがいいという部分もあった。それは追突軽減ブレーキ(CMBS)や前車追従クルーズコントロール(ACC)などの安全装備群。復路、ACCを利用して国道1号線由比バイパスを走行中、追い越し車線側に大型車が並びかかったさい、前にクルマがいないにもかかわらず突然急ブレーキがかかり、シートベルトが巻き上げられた。自車の車線の後方には別の大型トラックが接近しており、肝を冷やしたことといったらなかった。こういった誤検知は危険なので、厳にデバッグすべきであろう。

また、これは危険というわけではないのだが、少し半径の小さなカーブになるとACCが先行車両を見失い、前にクルマがいるにもかかわらず設定速度まで加速を始めようとするシーンも多々。35km以下に速度が落ちるとシステムがキャンセルされてしまうことともあいまって、ACCを使うのが嫌になったくらいだ。安全にかかわる装備の性能は、どれだけ磨いても損はない。スバルのアイサイト並みとは言わずとも、機械を信頼する気にさせる程度には洗練させるべきだろう。

昨年、鳴り物入りで登場したアコードハイブリッドだが、現在販売は失速している。過去の経験に照らし合わせれば、同じ条件で走ればトヨタの同クラスのハイブリッドカーが影も踏めないほどに優れた燃費、また抜群の長距離ドライブ耐性、軽快なハンドリングといった数々の美点を持ちながら、これほどまでに苦戦を強いられているのは、アコードハイブリッドをどのようなクルマにするかというターゲットが明確でなかったからだろう。

有り体に言えば、ホンダはアコードハイブリッドをエコカーに仕立てるのに気を取られるあまり、ホンダのラインナップの頂点に位置するプレステージセダンというもうひとつの役割を全部忘れていたといった感じである。ホンダのある有力ディーラーの首脳は、「アコードを試乗したホンダ車オーナーの多くは、その足でトヨタの『クラウンハイブリッド』の試乗に行かれていて、見比べるとやっぱり安っぽいねとご感想をいただく。エコ性能は良くても、400万円のセダンを買う喜びがないのでは、説得力がない」と率直に語る。

アコードハイブリッドがもし、ユーザーに「400万円はちょっと高いけど、これくらいの仕立てなのだからいいか」と思ってもらえるボーダーラインを越える仕立てであったら、販売の様相も少し違ったものになったであろう。ホンダの2モーター式ハイブリッドシステムi-MMDをはじめ、ハードウェアが一線級の性能であることには疑いの余地がない。が、良い機械を作るというだけでは、膨大な部品メーカーの上に立って付加価値を創造するアセンブリーメーカーとしての使命は果たせない。ホンダが今後、アコードハイブリッドをどのように変えていくかは、ホンダの自動車メーカーとしてさらにステップアップできるかどうかを占う重要なベンチマークだ。

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