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図2 小保方氏と石井氏らの画像切り張り(朝日新聞2014.4.26朝刊参照)

またSTAP論文の検討を行うために設けられた調査委員会の石井俊輔委員長が責任著者になっている論文でも、やはり切り張りして画像の順番を入れ替えていた。石井氏は「オリジナルデータはすべて保存してあり、問題はない」としているが、この件を受けて調査委員長を辞任した。図2は朝日新聞による説明図である。小保方氏は黒、石井氏は白という区別はきわめてあいまいである。

デジタル情報の加工はきわめて簡単

問題は、デジタル情報の加工はきわめて容易だということである。(1)はアナログ写真である。写真そのものは事実を切りとったものだが、日付を1年ほど偽って掲載された。(2)はデジタル写真である。合成することによって事実を歪曲した写真が掲載された。ともに報道倫理にもとるものとして関係者は処分されたが、(2)では実際にはなかったシーンがデジタル技術によって創作されている。

(3)はどうか。より見やすくしたという動機は、より迫力あるものにしたかったという(2)の場合とあまり変わらない。しかし、このような切り張りは、研究者の間ではかなり行われているらしい。

もう一つ、私のアサヒグラフ編集部時代のエピソードを記しておこう。アサヒグラフは写真誌である(だった)。配属された直後にデスクから、こんな話を聞かされた。アサヒグラフでは、いい写真を撮るのが編集者の仕事である。写真が悪ければ、記事がいくら良くても没である。カメラマンがいい写真をとったら、それはカメラマンの手柄だが、いい写真を撮れなかったら、段取りが悪かった編集者の責任である。

彼が部員時代に山里の1枚の写真をとったときの話を他の部員から聞いた。前もって下見をして、場所はどこからとるのがいいのか、シャッターを押すタイミングは朝がいいのか、日昼か、あるいは夜なのか、を決める。そしてたそがれ時を選んだが、レンズを通して見た風景は、画面右側がやや寂しい。その辺の農家に明かりを灯してもらえれば、いい写真がとれると思った彼は、わざわざ山を下りて農家を訪ね、明かりを灯してもらったという。