デザインした人 水野 学氏

最近、企業やビジネスパーソンにとって「デザインセンス」が必要だとよく言われます。消費者向けの商品だけでなく、ウェブサイトやプレゼン資料、身につけるスーツまで、様々な場面で「センスのいいデザイン」が求められています。

ここでいうデザインとは何でしょうか。僕は「かっこいい」「きれい」といった数値化できない事象の良しあしを最適化する行為だと考えています。消費者や顧客など、相手の心をつかむうえで、デザインセンスはとても重要です。

センスは天賦の才のように思われがちです。でも、実は誰でも磨くことができます。「365デイズノート」を例に、3つのポイントをお話ししましょう。

まずは王道を知ることです。王道のものとは、「定番のもの」「一番いいとされているもの」とも言い換えられます。

このノートをデザインするに当たり、僕は装飾面と機能面の2つの王道を探りました。たどり着いたのは、装飾面が黒い革カバーでクリエーターに愛用者も多い「モレスキン」、機能面は最近のヒット商品で分厚さが評判の「プレミアムCDノート」。2つをふまえ、それぞれの長所を集めたものをデザインしました。それは、「ありそうでなかったもの」でもあったんです。

2つ目は、使われるシーンを深く考えることです。

ノートで最も大切なのは書かれている内容です。過度な主張は、使う側にとって親切なデザインとは言えません。STALOGYのブランドカラーは、主張のない「グレー」。ノートの中面もグレーのページから始まり、限りなく薄く細いグレーのグリッドを引き、主張を最小限にとどめました。

また、1年365日、使えるようにするため、計368ページのボリュームにしました。それでも分厚さを感じさせず軽いのは、裏映りしない薄い紙を使っているからです。ノートは鞄の中に入れて持ち運ぶことも多いので、ベラベラとめくれないように角を丸くしています。