世界初の手話辞典をリリース

シュアールには手話通訳士が多数在籍しており、日本手話に対応する。ホテルや店舗、聴覚障がい者を雇用する企業などでも今後、利用が想定される。契約先に対するサービス料は端末1台当たり、月約3万円だが、利用はもちろん無料だ。

手話による表現を直接入力できるようにした手話キーボード。

「聴覚障がい者はこれまで服や靴を買う時には、紙にサイズや色を書いて店員に手渡すしかありませんでした。それでは、自動販売機と同じです。モバイルサインがあれば、店員と会話することができ、利用者に喜ばれています」と大木は語る。

シュアールのもう1つの手話ビジネスが手話事典「SLinto」(スリント)である。スリントは利用者自身が参加して作り上げるウィキペディア型のデータベースサービスだ。

従来も手話事典はあったが、日本語など話し言葉から手話を調べるもので、手話から話し言葉を引くことはできなかった。手話は指先の動きや手の位置、その動きと方向、さらに表情などの組み合わせで表現する複雑な表現形態なので、手話を紙やコンピュータ上で表すことは無理だと思われていた。

だが、大木はこの難題に挑戦し、「手話キーボード」という手話を入力する画期的な発明をした。手話キーボードは左右の指の形と手の位置だけを入力するシンプルな入力方式で、当然ながら検索すると候補の単語は複数出てくるが、その単語には手話の動画が付いており、それを見て探している話し言葉を特定できる。つまり、検索機能を敢えて厳密にせず、候補を示せばいいと割り切ったことで実現したのだ。

例えば、「右手五本指」と「お腹」の位置を選んで検索すると「空腹」「大会」「愛してる」という3つの候補が出てくるので、それぞれ映像を見て探すことができる。

スリントは2012年6月にα版、2013年8月にβ版が日米でリリースされ、さらに韓国、EUなどでの公開も予定している。各国の利用者が単語と動画を登録すればするほど、スリントは世界中で活用できる国際的な手話辞典に成長する。