■お金を産むのは誰だ

トヨタの製造現場の監督者は作業者に対して威張り散らすような行為はしない。むしろ、作業者に稼いでもらっている、食べさせてもらっている、という感謝の念を持つように上層部から言われることが多い。よって、監督者の使命はカイゼンし、「作業者が仕事を楽しめる」職場環境を築くこと。

■マルを描いて立ってろ

作業員のムダな動きを極力なくすため、工場管理者はあちこちを動き回ってばかりいるのではなく、ときにはじっと定点観測することも必要だということ。

ある地点にじっと立ち、全体を見渡すと人の動きを冷静に分析することができる。ある作業員は確かに忙しそうにしているが、よく見るとムダな動きも多い。また、工場内に必要ないものが置いてある。そうした事実にも気付くことができる。

■一日一善

漠然と仕事に向き合うのではなく、「いいことを一つする」などと小さな目標を立てて臨もうというスローガン。例えば、モノを運ぶワゴンの台車をほんの少し改良して動きやすくするなど工程のプロセスのどこかをカイゼンし、その内容をノートに記す。なかには、チーム全体で「いいこと一つ」運動に取り組むケースも少なくない。

■やってみせ、やらせてみせて、フォローする

かの連合艦隊司令長官・山本五十六の部下操縦法の名言「やってみせ、言って聞かせて……」に、「フォローする」を新たに付け加えた部下への作業手順の教え方。

ただ、単純に教えるのではなく、作業者などがマスターした、もしくは体で覚えた状態に達したところを確認することが求められる。

「私はこういう指導をしました。たぶん、(部下たちはその通りに)やっているでしょう」ではなく、フォローをしっかりして「教えた通りにやっています」と断言できるリーダーが理想とされている。

■お前は現場を見たか

昔も今も、「付加価値を生む現場こそがいちばん大切」という考えが浸透しているトヨタ。よって、いつの時代も、経営トップは現場をこまめに見て歩いては、作業者などに声をかける。そうした率先垂範によって、それぞれの現場のいい点やカイゼンすべき点を見抜き、経営トップ層同士で、「お前は、あの現場を見たか」と互いに語り合うのだという。

(OJTソリューションズ(中田富男氏)=取材協力)
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