一人よがりの正義感で突っ走ってはいけない

手続きは簡単。むしろ人望の厚い人間集めに奔走せよ<br><strong>東京管理職ユニオン書記長 設楽清嗣</strong>●1941年生まれ。慶應義塾大学文学部中退。書記長として数多くの争議を解決。
手続きは簡単。むしろ人望の厚い人間集めに奔走せよ
東京管理職ユニオン書記長 設楽清嗣●1941年生まれ。慶應義塾大学文学部中退。書記長として数多くの争議を解決。

結論から言うと、組合の形式的な設立自体は簡単。でも、強い組合にするには技術が必要です。

まずは形式的な設立の条件から。基本的には社内で仲間を集め(団体という性格から2人以上)、組合規約、運動方針、予算案をそれぞれ作成し、さらに役員(代表者のみでも可)を選出すれば、それだけで労働組合として団体交渉申し入れなどの権利を行使することが可能です。規約や方針などの作成方法は、地域の労働相談センターなどに必要なフォーマットや文案が揃っています。

設立には会社の許可や行政の認可も必要ありませんが、念のために労働委員会で労働組合の「資格証明書」の交付を受けておくことを勧めます。公的機関の“お墨付き”をもらったことにもなりますから、組合員に安心感を与えることができますし、会社に対してアピールするにも役立ちます。これもまた難しいものではなく、規約と予算案、役員名簿を労働委員会に提出するだけです。なお、すでに会社にユニオンショップ(社員に労働組合への加入を義務付ける制度)の労働組合が存在する場合でも、新たな労働組合をつくることは可能。そのためにユニオンショップを脱退したことを理由にした解雇を認めた判例は一つもありません。

では次に、実際に“強い組合”にするにはどうすればいいのか。組合づくりで頼りになるのは、社内の人間関係です。少人数であっても労働組合を組織することはできますが、影響力を考えれば、やはり人数は多いほうがいい。日ごろから信頼できる仲間との関係を密接に保ち、同調者を増やしておくことが肝心です。

特に社内でも人望の厚い人間は、なんとしてでも仲間に引き入れたいもの。そうした人間に対しては「皆から信頼されているあなたの力が、ぜひ必要だ」といった説得、根回しをしておくべきです。説得がうまくいかない場合には、その人の弱みを探ることも時には必要。この程度の「調略」を駆使できなければ、後々、会社の狡猾さに対抗することなどできません。