朝起きるとさっそくケータイでメールをチェックしたり、出社したらまずPCのメールボックスを開く人は多い。ビジネスパーソンの一日は、メールから始まるといっても言いすぎではない。

ただ、身近な存在ゆえに、一般の文章に比べ、文章のクオリティが軽視される傾向がある。京都大学の鎌田浩毅教授は、「書く目的を考えれば、メールも馬鹿にできない」と指摘する。

「文章は目的によって3つに分けられます。まず単行本や雑誌記事など、不特定多数に売ることを目的とした文章。次に企画書や提案書など、特定の相手からのリアクションを期待する文章。3番目が、年賀状やSNSへの書き込みなど、人とつながるための文章です。仕事のメールは2番目のリアクションを期待するケースで、基本は他のビジネス文書と同じ。短いからといって手を抜かず、相手から何らかのアクションを引き出すことを念頭に置くべきです」

メールの場合、引き出すべきアクションは明確である。相手からの返信だ。自分ではいいメールが書けたと思っても、相手から返信がなければ意味がない。では、どのような点に気をつければいいのか。まず注意したいのはサブジェクト(件名)だ。

「受け手はサブジェクトを見て、読むか読まないか、いつ処理するかを判断します。何の情報も含まれていない『こんにちは』は最悪。迷惑メールと間違えられて削除されても仕方がありません。サブジェクトで最低限伝えるべき情報は、自分の所属・名前と、用件の2つ。たとえば『京都大学鎌田浩毅です。資料送付をお願いします』と書けば、相手は中身を読む前にどう対応すべきか判断を下せます」

相手がメールを開いても、返信ボタンを押す気になるまでには、ほかにも多くの壁がある。