フェイスブック(FB)に匿名で誹謗中傷を書き込まれた飲食店が発信者の情報開示を求めた裁判で、東京地裁は8月12日、開示を命じる仮処分命令を出した。「FB社に対して、情報開示の仮処分命令が出された、日本初の事例」(店側の代理人:清水陽平弁護士)という。

注目すべきは以下の3点だ。

第一に、海外企業であっても、日本で事業展開していれば日本で提訴できる点である。海外企業を訴える場合は、通常はその母国の裁判所になるが、「今回は民事訴訟法上の特例ルールを利用して、米国のFB社に対して仮処分を求めた」(清水氏)という。これには今年5月、EU司法裁判所が米国グーグル社に対し、検索結果に表示された不適切な個人情報の削除を命じた先例がある。国境を越えて事業展開するIT企業であっても、日本国内では日本の法律の拘束を受けることを示したのは大きい。

第二は、実名を原則とするFBで匿名の書き込みが増えている点だ。日本特有の現象のようだが、FB上では「匿名・有名人の顔写真を使ってること自体がおかしい」「アカウントをなぜ凍結しないのか」「実名だからこそ一定の秩序が形成される」といったコメントが寄せられている。一方で、利用規約上は違反である匿名者でも、適切に利用しているユーザーも少なくない。問題は、一部に誹謗中傷を目的とした匿名ユーザーがいることだ。LINEのなりすまし詐欺同様、一般のユーザーが実名と思い込む危険もある。

第三は、プロバイダのログ保存期間の問題だ。裁判所でIPアドレス、記録日時の開示を受けても、プロバイダのログ記録が消失すれば、書き込んだ相手を特定できなくなる。「一般のプロバイダのログ保存記録は3カ月程度。その間に対処しなければならない」(清水氏)。警察は動きが非常に遅いため、ログがなくなり捜査に支障をきたす例も少なくないという。インターネットが世界的な公共インフラとなっている現在、このログ記録の保存期間の問題は、今後しっかり議論されるべきだろう。