(1)部下のタイプに応じて「価値」を定義する

多くのリーダーが、気にかける価値があるのは標準を優に超えた、しかもきわめて目立つ貢献をしているスター・パフォーマーだけだと思い込んでいる。

「しかし、組織では毎日、英雄的な行為がなされている」と、ギャラップ・オーガニゼーションのグローバル・プラクティス・リーダーで、マーカス・バッキンガムとの共著、『まず、ルールを破れ──すぐれたマネジャーはここが違う』(宮本喜一訳、日本経済新聞社)で知られるカート・コフマンは言う。「それなのに、業績がトップクラスではなかったり、簡単には測定できなかったりする場合、そうした社員は注目されないままだ」。

トップ・マネジメントが注目しないところで貢献している有用な社員は、ともすると「Bプレーヤー」と称される。Aレベルのスター・パフォーマーのほうが一般に仕事の質の点でも量の点でも生産性が高いのだが、Bプレーヤーは別の形の価値をもたらすと、ハーバード大学経営大学院教授、トマス・デロングは言う。

たとえば、多くのBプレーヤーがAプレーヤーほど野心家ではなく、そのため一つのポジションにより長くとどまると、デロングとヴィニータ・ヴィジャヤラガーヴァンは、『ハーバード・ビジネス・レビュー』2003年6月号の記事「Let's Hear It for B Players(Bプレーヤーに拍手を)」で述べている。彼らの長い在任期間は安定を生むとともに、組織の文化や政治力学やプロセスについての深い知識をはぐくむ。そのような社員は、幅広いネットワークを築いて組織の長老的存在──政治的に難しい方面からプロジェクトへの承認を取りつけようとするとき、人々が相談に行く人──になることが多いのだ。

「マネジャーがこれらの社員をないがしろにしたら、そのツケは自分に回ってくる」と、デロングは言う。