誰でもチャンスがある人事制度を導入

【塩田】この制度の導入は大きなプラス効果を生むと思いますが、懸念もあります。一言で幹部人事といっても、次官、局長だけで 200人、それ以外の幹部も含めると 600人ともいわれる人たちの人事を内閣人事局で本当にきちんとコントロールできるのかどうか。実際はせっかくの新制度が有名無実化するのでは、という心配があります。

【加藤】内閣人事局で幹部人事の全部を決めているという誤解が一部にありますが、そうではありません。基本は各大臣が任命権者です。各人の人事評価は各大臣の下で行われます。それを前提に、統一した視点で能力などを判断します。

各省での評価を踏まえながら、各府省庁から出された名簿を、まずわれわれの視点で審議官級、局長級、次官級として能力を持っているかどうかを見る。それをクリアした名簿を、また各省に戻す。各省はそれを見ながら、その人を次官、局長というふうに具体的に配置案を決める。そして、各省の案でいいかどうかという判断を最終的に総理、官房長官の下で行い、確定します。そういうふうに役割分担しながらやっていきます。

評価がきちんと行われることも大事ですが、評価を人事に反映していく仕組みができ上がるのが大きい。役所のみなさんも、どこで何が決まり、こういうルールでやっていくことが分かれば、そういう方針に沿って頑張っていこうということにつながると思います。

【塩田】長い間、各府省は伝統的に縦割り構造の下で官僚自身による自己完結的な人事を行ってきた感があります。そういう体質に風穴を開けようという決意ですか。

【加藤】役所は役所で人事を考えていますが、例えば次官人事などで3代先とか5代先まで見通せるようなことをやっていると、他の人たちの意欲が薄れていく。今回、そのときに頑張った人を、次官なら次官にしていくという仕組みを取り入れた。その意味では、誰でもチャンスがあり、働く人たちの意欲にプラスになる制度だと私は思いますね。

【塩田】官僚の人事に政権の側の思惑が強く反映され、官僚組織の中立性が損なわれるのでは、と懸念する声もあります。

【加藤】幹部職員の任用で、人事評価、適格性審査、幹部候補者名簿の作成、任用候補者の選抜、任免協議を経て任命という段取りをきちんとつくっていますので、今回の仕組みは、むしろそういう懸念を薄くする仕組みではないかと思いますが。

【塩田】新制度の1回目である今年の人事で新方針を打ち出したのですか。

【加藤】まず「採用・昇任等基本方針」を決めて(6月24日に閣議決定)、この中で基本的な考え方や指針を示し、こういう形でやっていきますと打ち出した。具体的には「戦略的人事」ということで、例えば政府の日本再興戦略の第2弾や骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)を決め、その中に書き込まれている課題について、各府省庁がどう対応していくのかをはっきりさせ、それを実行するために人をどう配置するかという戦略をつくるように指示し、説明を求めました。その次は女性の登用です。

縦割り行政の弊害の除去という点でいえば、今は役所間交流をと言っていますが、私は最終的には交流ではなく、役所の縦割りにこだわらない人事があってしかるべきと思っています。交流は、また戻るということで、基本的に入省した役所が前提になっている。そうではなく、行った先がよければ、そこで上に上がっていく。役所に入ったときと40~50歳台の脂が乗り切ったときとは、社会状況が違う。政府全体から見れば、30年前はA省は非常にたくさんの仕事があったけど、20~30年後に仕事が多くなっているのはB省かもしれない。そうすると、A省の人たちをB省に持っていくのも当たり前と思います。