最大35人の担当をする激務

では、問題のあるケアマネージャーはどうか。実は、弱い立場にある要介護者の要望よりも自分の方向性を優先することがあるそうです。サービス内容よりも自らが所属する事業所と関係が深い事業者を手配することが多いのです。

私の父の場合、介護期間は1カ月半と短かったこともあるでしょうが、ウチを担当した介護サービスのスタッフが皆、誠実な仕事をしてくれ満足できたのも、Sさんというケアマネージャーがいたからでしょう。

ただ、ケアマネージャーが大変な仕事ということも確かです。ひとりが担当する人数は要介護者35人、要支援者8人までと決められていますが、要介護者が増え続ける今は上限ギリギリまで受け持たされるケアマネージャーも少なくないといいます(Sさんは「少なくしてもらっている」と言っていましたが、それでもウチを担当していた時は28人だったそうです)。

担当する要介護者には独居で毎日のように様子を見に行かなければならない人もいますし、30人あまりのすべてに配慮を行き届かせるのは難しいでしょう。要介護者や家族から見れば担当者はひとりですが、ケアマネージャーにとっては30数人のなかの1人なのです。

Sさんにも、父が亡くなったあとお世話になったお礼を言うために訪問した時、話を聞いたのですが、評判のいいSさんでも、担当した要介護者や家族とトラブルがあると言っていました。

ただ、そのトラブルが自分のミスで生じた場合は謝罪し、二度と同じミスをしないように心がけていると言っていましたし、事態を少しでも良くするための努力を惜しまないそうです。そうした姿勢があるから評判がいいのでしょう。

また、トラブルの種は要介護者サイドにある場合もあるようです。介護サービスは家庭に立ち入らざるを得ない仕事ですが、それを拒む人もいる。逆に過度な要求をする人もいるそうです。介護は人と人が気持ちの部分も含めて密接に関係する行為。介護サービスを受ける側は、相手の専門性をリスペクトし素直に受け入れる姿勢が大事だと思います。

それでもIさんがいうように、問題があるケアマネージャーが存在することも事実。利用者側がケアマネージャーや介護サービス事業者に不満があっても、何も言えず我慢していることは多いそうです。要介護者サイドにとってケアマネージャーは頼みの綱。人間関係をこじらせたくないという思いからでしょう。

「でも、受けている介護サービスに疑問を感じたら、変えてもらうのは正当な要求です。場合によってはケアマネージャーを変更することもできます」とIさん。

ケアマネージャーを変更するには、派遣している事業所や地域包括支援センター、役所の介護保険課に相談するといった方法がある。

私の場合は運よく良いケアマネージャーに当たりましたが、そうでない場合は、変更してでもベストと思える人を見つけ、担当してもらうことが大事なのです。

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