結果だけを見れば成功だった

2000年頃、日本のインターネットへの接続は、今では信じられませんが、ダイヤルアップ接続がメーンでした。一般電話回線、ISDNを通じて各プロバイダ業者に接続し、そこから先はプロバイダの持っている専用線で世界中と接続していました。ただ、いかんせん、遅い。画像などが多いとそれを読み込むのに膨大な時間がかかってしまう。しかも当時は、接続時間により課金される従量制だったため、今のように「つなぎっぱなし」にはとてもできなかったのです。

そんな「遅くて高額」なネット環境をなんとか変えたい。接続スピードを50倍、100倍、1000倍にすることができれば、日本企業の競争力の下支えとなり、低迷する日本経済全体を底上げできるのではないか。その一心でした。

とはいえ、そもそもソフトバンクの創業時は、パソコンソフト卸業。メーカーから仕入れ、販売店に卸す。それをきっかけに、徐々に収益を高めていった。そういう意味で、一般消費者に直接営業するのはそのときが初めての経験でした。またそれ以前に、通信インフラづくりという公共的な事業に携わるのも初めて。

これまでネット関連の会社への資本参加やジョイベンなどはしてきましたが、通信インフラは全く未知の領域のビジネスといっていいでしょう。

しかも、繰り返しになりますが、この頃の会社の資金は不足している。未知の分野ゆえに、当初は経験もノウハウも足りなかった。ソフトバンクは昔から、特に専門的な技術がない会社だと言われ続けてきましたが、それでもなんとかやって乗り越えてきた。このときも技術者を緊急に集め、大きな課題をクリアしました。

当時のビジネスを戦国時代にたとえれば、ソフトバンクは、あの織田信長率いる陣営と同じでした。約3000の勢力で、その約10倍以上の兵力を擁する百戦錬磨の今川義元軍に歯向かっていったような構図です。

結果だけを見れば、僕のかけは成功したということになります。でも、冒頭に述べたように未知で新規分野への投資は、10回のうち9回は諦めるほうが無難でしょう。いつも失敗を覚悟で実行していたら、間違いなく会社はつぶれます。博打は大一番で打つものです。