見積もりが甘い修繕積み立て計画

とはいえ、大規模修繕のために住人は計画に基づき毎月積み立てをしているはずで、それが守られれば追加負担は発生しないのではないか。そんな疑問を持つ人もいるでしょう。

確かにその通りなのですが、実際は修繕計画の見積もりが甘かったり、想定外に修繕コストがかかったりするケースがあるのです。計画の立案者は表向き管理組合ですが、そのフォローをする管理会社の役割がとても大きい。マンション管理業務のプロであるだけに立案内容に大きな間違いはないと信じたいところですが、案外そうではありません。

早い話、管理会社にとって修繕費はどうでもいいのです。住人が支払う管理費に関しては、その一部が管理会社の収入となるので、管理費の設定について管理会社はできるだけ高めにしようとします。ところが、修繕積み立てはそのすべてが住人のもの。管理会社には1円も流れません。よって、その設定額が高かろうと低かろうと管理会社には何も関係がないのです。

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大規模修繕計画の25%は資金調達に苦しむ

マンションのデベロッパーは、多額のローンを組む住人の負担を減らそうと修繕積み立ての額を少なめにすることがあります。購入する住人としては、管理会社に任せておけば大丈夫と丸投げしていると、いざ大規模修繕の実施直前となると、資金の不足が露呈し、緊急で住人の出費が必要となる事態が発生するのです。

マンションの1平方メートルあたりの平均修繕積立額は、北海道81円、東北77円、東京23区98円、同都下85円、南関東91円、東海75円、大阪70円、兵庫69円、ほかの近畿60円、中国52円、九州66円、全国82円です(「マンション管理新聞」2012年1月5日付)。

購入した中古物件の修繕積立額がこの相場と比較して、あまりに低ければ修繕計画の見積もりが甘い可能性が考えられます。

住宅コンサルタント 平賀功一
1967年生まれ。「e住まい探しドッコム」主宰の傍ら、「All About」不動産ガイドを。最新刊に『新版 マンションはこうして選びなさい』(共著)。
(構成=大塚常好)
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