――自動運転技術の実用化が現実味を帯びてきた。自動車保険に影響はあるか。

【櫻田】自動運転によって生じる新しいリスクについて研究しなければならない。自動車本体だけでなく、道路・通信インフラ側の誤作動で事故が起きるかもしれないし、自動運転中に運転手が居眠りしていたら法的責任はどうなるのかという問題もある。同じことは介護ロボットにもいえる。技術革新に対して、保険業界が貢献できることはいろいろあるはずだ。

――急成長するアジアのマーケットは魅力的だが、現状はどうか。

【櫻田】海外に進出する日系企業の支援のためアジアに展開している日本の損保会社は多いが、地場市場への浸透度では欧米に後れを取っている。各社はリーマンショック前後から積極的なM&Aで基盤をつくってきたが、新興国は地場資本の金融コングロマリットの影響力が強く、彼らとの競争も容易ではない。これからが正念場だろう。

――協会として、各社のアジア戦略をどのように支えていくのか。

【櫻田】アジアの国々にインフラ支援をしていく。現在のインドネシアの保険の浸透度は、1950年代の日本と同じだ。ただ、成長のスピードが速いため、日本の過去の経験を伝えても参考にならないだろう。求められているのは、日本の最先端の状況はこうで、だからこのような仕組みが必要だという提案だ。すでにインドネシアに対しては、官民共同で保険料率算定の提案を行っている。そうした取り組みを進化させて、日本がもっともサポーティブだといわれる環境をつくることが大切だ。

日本損害保険協会会長 櫻田謙悟
1956年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業後、安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン)入社。2010年より損害保険ジャパン社長。12年より日本興亜損保との持ち株会社NKSJホールディングス社長を兼任。14年6月30日日本損害保険協会会長に就任。
(村上 敬=構成 市来朋久=撮影)
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