「ここに来ると安心できる」と感じられるか

医学的条件がクリアできれば、あとは、行ってみた時に「ここは安心できる」と感じられることが大切だ。分娩中は心理的なものの影響も強く受けるからだ。

信頼できる産科医がいることは一番重要だが、高齢出産の場合は、特に説明がていねいな医師と出会いたいもの。高齢出産は医療行為が多くなりがちだが、その時には、納得できる説明をしてほしいからだ。

出産方法はできるだけ自分から積極的に考えたいが、実際には医療者の協力なしには実現は難しい。つまり、施設選びで決まる面が大きいということ。「こんな出産がしたい」というイメージがある場合は、最初の段階で聞いておこう。

助産師さんのケアにも注目

助産師さんのケアも、産院選びの大切な鍵だ。分娩は、ついてくれるのは医師ではなく助産師さんだ。また最近は「助産師外来」などの名称で、助産師さんが妊婦健診を担当する出産施設が増えてきたので、ますます濃いお付き合いになってきた。

高齢出産で最もたくさんの人が「大変だった」と言うのは、実はお産よりも、産後の生活だ。これも、助産師さんのケアしだいで大変さが変わる。産後生活のポイントは、母乳がうまく軌道に乗るかどうか。飲ませ方、抱き方の実地指導に左右されることが少なくない。母乳、特に初乳は赤ちゃんにとって天然の抗生物質なので、大切にしてあげたい。

忙しい人ほど産院選びを大切に

最近は高齢出産が全国的に増えてきて、不妊治療による妊娠や40代の妊娠、責任の重い仕事を続けながらのマタニティライフも都市部では珍しいことではなくなった。出産施設も対応に慣れてきている。

ただ妊娠中には、わが身・わが子を守るため、どうしても仕事を犠牲にしなければいけないこともある。無理は禁物だ。そのためにも、忙しい人ほど、きちんとコミュニケーションがとれる医療者と出会ってほしい。手間をかけた分は、必ず返ってくる。

河合 蘭(かわい・らん)
出産、不妊治療、新生児医療の現場を取材してきた出産専門のジャーナリスト。自身は2児を20代出産したのち末子を37歳で高齢出産。国立大学法人東京医科歯科大学、聖路加看護大学大学院、日本赤十字社助産師学校非常勤講師。著書に『卵子老化の真実』(文春新書)、『安全なお産、安心なお産-「つながり」で築く、壊れない医療』、『助産師と産む-病院でも、助産院でも、自宅でも』 (共に岩波書店)、『未妊-「産む」と決められない』(NHK出版生活人新書)など。 http://www.kawairan.com