県民病一覧
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興味深いのは、がん検診でがんが見つかった患者のうち約75%は「限局がん」だったということだ。がんが「領域がん」に広がったり、すでに「転移がん」となっていた人は4人に1人以下だった。

つまりまだそれほど進行していない状態でがんが発見されているといえる。ところが、がん検診をしていない患者の場合は「限局がん」の割合が51.6%でしかない。こちらは逆に2人に1人がすでにがんが広範囲に及んだり転移していたのである。

「これは、がん検診を受けた人のほうが軽度のがんのときに発見されていることの表れです。当然、治療効果も大きく期待できます。つまりがん検診の受診率を高めることが、がんによる死亡者数を抑えることに繋がるのです。突破口はここにあると考えて、今その啓蒙運動を強化展開中なのです。検診率は現状ではまだ20%足らずですが、12年末までには何とか50%を目指したいと考えています」(金子氏)

だが、がん検診の受診率の向上は容易ではない。秋田県だけでなく、これは全国的に見ても課題となっている。どの自治体でも広報誌によるPR活動だけでは「なかなか上向きにならない」と実効性に疑問が付いて回っている。

そのためかPR活動も自ずと大掛かりなものとなっていく。秋田県でも11年1月に秋田県文化会館で、「日本対がん協会ほほえみ大使」の肩書を持ち、自身も乳がん摘出手術の体験者であるアグネス・チャン氏を招き、「がん検診推進フォーラム」を開催するなど、あの手この手で、がん検診の重要性を県民に訴えようとしている。

この種の啓蒙運動は確かに派手ではあるが、どこか他人事のようなイベントに終わってしまうことが多い。そこで秋田県ではもっと直接的に県民に声をかける方法が試験的に行われている。「秋田県がん検診受診勧奨センター」をつくり、看護師など4人のスタッフが、北秋田市の一部で、住民に検診を勧める電話を直接掛けたり家庭訪問を展開しているのだという。

「これで実際に検診率がどこまで高まるか、その成果を大いに期待しています」(金子氏)

全国的にも珍しい「直談判」による検診率向上作戦。そこまでやらなければ、がんによる死亡率を抑え込むことは難しい現実に秋田県は直面している。

また一方では、秋田県は脳血管の疾患で亡くなる人も多い。脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血など脳血管疾患による死亡率は岩手県に次いで2番目に高い。心疾患も全国6位にランクインされているので、がんを合わせた日本人の三大死因の上位を秋田県は常に占め続けている。さらに、自殺、不慮の事故でも秋田県はワースト・ワンという深刻な事態だ。

食生活や生活習慣の見直しといった個人的な改善の必要性はいうまでもないが、先の「直談判」に見るような行政サイドの強い指導力や、一過性に終わらない地道な取り組みもまた求められているのである。