2014年8月15日(金)

新しい薬が世の中に出回るためには、こんなに手間暇がかかっている!

<経営者の言葉:アキュセラCEO・窪田 良>開眼!「朝令暮改」仕事術 第7回

PRESIDENT Online スペシャル

著者
窪田 良 くぼた・りょう
創業者・会長・社長兼CEO、医師・医学博士

窪田 良1966年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学院に進学。緑内障の原因遺伝子「ミオシリン」を発見する。その後、臨床医として虎の門病院や慶應病院に勤務ののち、2000年より米国ワシントン大学眼科シニアフェローおよび助教授として勤務。02年にシアトルの自宅地下室にてアキュセラを創業。現在は、慶應義塾大学医学部客員教授や全米アジア研究所 (The National Bureau of Asian Research) の理事、G1ベンチャーのアドバイザリー・ボードなども兼務する。著書として『極めるひとほどあきっぽい』がある。Twitterのアカウントは@ryokubota。 >>アキュセラ http://acucela.jp

執筆記事一覧

窪田 良=文
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薬のつくり方、知ってますか

創薬になじみがない読者の方も多いかと思いますので、今回は薬のつくり方についてできる限りわかりやすくお話ししたいと思います。

薬をつくる前にまずしなければならないのは、病気を治療する為にはどのような変化を体に与えなければならないか、あるいはどのタンパク質の機能を調整しなければならないかを研究します。例えば胃酸が出過ぎて胃潰瘍になっているのであれば、どのようなタンパク質の働きを弱めれば胃酸の分泌が抑制されるのかを調べます。

一般的にタンパク質の機能を促進するより、抑制することのほうが行いやすいので、阻害することによってよい影響を与えるタンパク質分子を選定します。この選定されたタンパク質を薬剤の開発可能な「ターゲットタンパク質」と呼びます。ターゲットタンパク質が決まったら、このターゲットに結合する薬剤を見つけます。

薬剤にはざっくりと3つのつくり方があります。1つ目は、ある種の細菌や木の抽出液などの天然に存在するものから抽出した物質を薬にする方法で、世界で初めて発見された抗生物質として知られるペニシリンなどがあります。2つ目は、空気中にいくらでもあるような酸素や窒素などからできている有機化合物からつくり出す、一番よくある薬のつくり方です。3つ目は、人間などの体の中にあるタンパク質に対する抗体を作成したり、膵臓にあるインシュリンなどの生体物質をそのまま薬にする方法。順番に、天然物、低分子化合物、抗体医薬などの生物製剤の3つの分野に分かれています。

私たちは、2つ目の低分子化合物で薬をつくろうとしています。

中学や高校の理科や科学の授業で元素記号を習った時に、右図のような分子構造を見たことはありませんか? 見ての通り、6角形の構造式が亀の甲に似ているため、通称、亀の甲と呼ばれています。この図にも炭素(元素記号=C)が含まれているように、炭素を含む化合物の大部分を有機化合物といい、有機化合物は、炭素、水素、窒素などを組み合わせて作られます。

その有機化合物から分子模型というものを合成化学者と呼ばれる職人たちがミクロの世界でつくっていくのです。ちなみに低分子化合物というのは、分子と分子、原子と原子が結びついてできる化合物の中でも、結びつきの数が少ないものだと考えてください。結びつきが多く複雑なタンパク質などの高分子化合物よりは高い安定性を確保しやすい(冷蔵不要で室温保存が可能な)場合が多く、製造コストも安価であると言われています。

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