念願の現場へ

99年の大阪工場への異動もチャレンジでした。生産管理の仕事についていたとはいえ、20年間本社勤めで「浦野は現場を知らない」「ご本社様はいいよね」と言われていましたし、自分でも現場を経験していない引け目がありました。「本社以外で行けるところならどこでもいいです」とお願いして実現したのが大阪工場でした。見知らぬ土地で、知識も経験もない中での赴任でしたが工場の人たちに助けられました。現場では安全や品質を守る為に指示命令系統がしっかりしていて、職位へのリスペクトがあるのです。新しく来た管理職が仕事に不慣れでも、それをサポートするのが自分たちの役割だと考えています。それに関西の人たちは性格的に困っている人をほっておけない。

私の仕事道具:一筆箋。紙にはこだわりがある。何かを送るときにひと言添えられるように、いくつか常備してある。

しかし仕事には大きなプレッシャーがありました。01~02年はちょうど業績のV字回復のどん底にあった時代です。会社から「在庫やコストを3分の1に減らせ」と根本的な業務の見直しを迫られていました。少しばかりの改善では許されません。それまで部品を自社の専用トレーラーで運んでいたのをライバル社と手を組んで共同配送するなど発想を変えてコスト削減を図りました。このときわかったのが、高い目標を持つとアイデアのレベルがまったく違ってくるということです。

私は異動のたびにたくさん学んできました。初めての仕事だと、すぐにはできないこともあります。でも詳しい人に聞けばだんだん勘所がわかるでしょうし、自分ができなければ同僚や部下にやってもらうこともできます。だから女性のみなさんは会社からローテーションを勧められたら心配することなくぜひ受けてほしいと思います。新しい仕事には面白いことがいっぱいあります。

大下明文=構成 向井 渉=撮影