1998年と2010年の違い

今回「評伝デル・ボスケ」に推薦文をいただいた岡田武史氏は、言うまでもなく1998年と2010年の二度にわたり日本代表を率いてW杯に出場した人物である。ただ、1998年の岡田武史氏と2010年の岡田武史氏は全くの別人である。

「1998年版岡田武史監督」は監督経験が皆無だった。アジア予選で結果を残したとはいえ、わずか数試合の「暫定監督」だった。陸軍士官学校を優秀な成績で卒業したとたんに世界大戦の総司令官をさせられたようなものだ。そこには、かなりの無理があった。

しかし「2010年版岡田武史監督」は違う。Jリーグで札幌をJ2からJ1に昇格させ、横浜マリノスを優勝に導いている。監督として確実にステップアップしていたからこそ、あれだけの批判を乗り越えてグループ予選突破を果たすことができたのではないか。

「男子三日会わざれば刮目して見よ」という。逆もまた真なりで、2010年のシャビと2014年のシャビは別人である。今大会と前大会では同じシャビでも、まったくの別人と言える。加齢の衰えがあることも間違いないだろう。「シャビ」の部分をほかの選手の名前に変えても同じである。

スペインの主要メンバーは加齢などにより、今大会では、その繊細なサッカーを維持できるだけの能力には達していなかったのではないか。しかし、デル・ボスケは、主要メンバーたちの過去の偉大な業績のため、大幅に人選をいじることができなかったのだろう。

ここまでスペイン代表の敗因を縷々と述べてきた。

世界的に見てもスペイン代表は非常にまとめるのが難しい一団である。かつて内戦があり、今も地域差が激しい土地柄だ。EURO2008で優勝するまで。国際大会では、いいところまで行っても勝ちきれないという失敗を繰り返してきた。

国自体がまとまりが悪いという現実の中で、前回W杯で世界制覇を達成したデル・ボスケ氏の偉業は今回の敗北をもっても色あせることがない。氏の契約は2016年までとなっている。選手の顔ぶれががらりと変わったEURO2016で完全復活されることを祈念したい。