スパゲティ化の改善にも
外部の力を

竹田 正●たけだ・ただし
(株)野村総合研究所
金融IT事業開発部
主任コンサルタント

一方、竹田氏は先ほどのスパゲティ化の例を引き、BPO活用のメリットを次のように説明する。

「ある会社はBPOベンダーと連携することで、スパゲティ化を解消できました。業務そのものを一から洗い直し、人手に頼るところとシステムに頼るところを切り分けたのです。それによって、パッケージ化されたシステムをカスタマイズするのに比べ、コストの削減も実現しました。これは、ある意味システム部門とユーザー部門の両方の視点を持つ、BPOベンダーならではの強みが生かされた形です。自社内だと分業が進み、システムかユーザーかどちらかに偏りがち。その点、外部の事業者なら全体的な視点を得ることが可能なのです」

BPO活用のメリットは、コスト削減効果だけでなく、業務の外部化から得られる全体的なビジョンだ。これが、変化に対応する業務の再設計を後押ししてくれるのである。

業務改革を共に進める
ビジネスパートナー

ではBPO活用を考えるとき、委託する側としては、どんな点に留意すべきなのか。竹田氏は「まず、単に既存業務を任せるのか、それとも付加価値を求めるのか、明確にするのが出発点」とアドバイスする。

「付加価値としては、いままで述べてきたように業務設計力があります。また、ベテラン社員の退職などに対応する業務継続性へのニーズもあります。それにBPOで自社以外に拠点を設けることは、BCP(事業継続計画)にも有効かと思います」

確かに団塊世代の退職を背景に、継続性という観点からアウトソーシングを進める企業は多い。またBCPも含めリスク対策としてのアウトソーサーとの連携は、今日的なテーマだともいえる。

さらに能勢氏は言う。

「委託する側には、一生付き合うパートナーを選ぶくらいの心構えが必要ではないでしょうか。短期的な活用法ももちろんありますが、中長期的な連携によって得られるメリットが大きくなる場合は多い。その面では、突発事故が発生したときどれだけ対応ができるのか、ベンダー側の対応能力も重要になります。その一つの目安となるのが、コミュニケーションの密度。先述した運用状況の可視化と、そのレポートの内容や頻度。新たな業務プロセスの提案力を含め、情報交流の質と量に目を向けるべきでしょう」

コスト削減という視点だけで事業者を選ぶのではなく、業務改革を共に進めるビジネスパートナーとしてBPOベンダーを選定することが、いま求められている。多様なベンダーが多彩なサービスを提供するなか、その選択が企業の競争力にも大きな影響を与えそうだ。