3両目が埋まったら、GO!

【白河】素敵な会社の名前です。その失敗をもとに古民家を改造したITふれあいカフェを作られたんですね。

【奥田】はい。1回の講習では変えられない。いつでも寄り添える場所が必要だと徳島に作りました。でも、それを見て鹿児島に住む要介護4の父が「うちの家を提供してITふれあいカフェにしよう」とすっかり生き生きしてきました。

【白河】ワークライフバランスと言いますけれど、人生におけるさまざまな出来事が、プライベートにも仕事にもつながっているんですね。

【奥田】そうです。そもそも仕事とライフを切り分けようなんて言うのが男性社会からの発想だったのだと思います。男性が狩りや戦に行っていた社会は切り分けたほうが幸せだったでしょうし。

【白河】奥田さんは若い世代もたくさん育てていますが、ぜひ女性たちにアドバイスを。

【奥田】現代は変化の速い時代です。だからこそ10両編成の列車を計画で満席にしてスタートしちゃいけない。想いという車両が3両ぐらい埋まったら発車して、止まる駅ごとに、必要なものを乗せていけばいい。パートナーとか、仕事とか、お金とか、子どもとか。ガチガチに計画した車両で、4両目には子どもを乗せる予定なんて思っていてもうまくいくわけありません。会社も収入も夫も愛も全部時とともに変化していきます。だから完璧な計画で発車するより、コツコツ進みながら、コツコツ駅ごとに確認していくことが大事。そう思えばいいんです。子供にしてもコツコツ育てながら周りを巻き込んで子育てという車両に次々と人を乗せていく発想でいいんです。「後ろの車両空いてます、だれか一緒に乗って協力してください!」って発信する感覚です。

【白河】 3両が埋まったら見切り発車! 変化の速い時代を生きる女性への先輩からのメッセージですね。ありがとうございました。

奥田浩美
ウィズグループ代表、たからのやま代表。鹿児島県生まれ。インド国立ムンバイ大学大学院社会福祉課程修了。国際会議の企画運営会社を経て91年、ITに特化したイベントサポート事業を設立。2001年、ウィズグループ設立。引き続きIT系大規模コンファレンスの事務局統括・コンテスト企画などを行う。13年には「たからのやま」を設立。徳島県の限界集落に高齢者のタブレット使用のサポートを行う拠点を設け、高齢者との共同製品開発事業を開始。

白河桃子

少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大客員教授、経産省「女性が輝く社会の在り方研究会」委員
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。「妊活バイブル」共著者、齊藤英和氏(国立成育医療研究センター少子化危機突破タスクフォース第二期座長)とともに、東大、慶応、早稲田などに「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプランニング講座」をボランティア出張授業。講演、テレビ出演多数。学生向け無料オンライン講座「産むX働くの授業」も。著書に『女子と就活 20代からの「就・妊・婚」講座』『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』『婚活症候群』、最新刊『「産む」と「働く」の教科書』など。

撮影=川本聖哉