ショールーミングは認知を得るチャンス

リアルな実店舗の存在は、ネット通販を成功させるうえで、大きな力になる。これは各社に共通する見解だった。いま小売業では「ショールーミング」が問題になっている。ネット通販での購入を前提に、店頭で試用や試着だけをする行為だ。店頭で手厚いサービスをしても購入につながらない恐れがある。だが大量の試聴機を置く「e☆イヤホン」の大井裕信社長は「それでいい」と気にかけない。

「わざわざ店に来てくれるというだけでもありがたいこと。私たちはお客さんに『また来たい』と思われる店を目指さないといけない。目的がショールーミングでも、そのうち『どうせ買うんだったらあそこで買おう』と思ってもらえれば、生き残れるはずです」

モノタロウの鈴木雅哉社長も「サービス名で覚えてもらうことが重要」という。

「商品を検索するときに『ここで探そう』とイメージしてもらえるかどうか。そこが勝負。顧客に『ここで買ったら便利だった』と覚えてもらいたい」

安いから。楽だから。検索してたまたま見つけたから。ネット通販を利用する入り口は千差万別である。あらゆるものがフラットになるネットの世界では、利用者にとって特別な場所になれなければ、再訪してはもらえない。それに成功したとき、消費者は実店舗に足を運ぶことがなくても、キーボードを操る指がネット上の店を目指すようになるに違いない。

(文中敬称略)

(遠藤素子=撮影)
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