2013年度の売上高は26億円。これは国内市場で約8%のシェアを意味する。そして驚くべきことに、「e☆イヤホン」の売上比率は創業以来、ネットと実店舗が半々のままで現在に至っている。つまりネットの売り上げが伸びるほど、秋葉原と日本橋の実店舗の売り上げも伸びているのだ。

売れ筋のヘッドホン「beats」のフラグシップモデル。バッテリー充電駆動式。

それを支える理由のひとつは顧客との距離の近さ。スタッフのレビューを覗くと、「臨場感と迫力が増し、音楽を聞くことがますます楽しく思えます」「3000円なのにこの音質……やばい、買いそう」など、正確無比にスペックを伝える表現は少なめで、個人の体温を感じさせる文章が並ぶ。こうした投稿を読んで客が「××さんが褒めるなら買います!」と商品を買いに来ることもあった。スタッフの「ファン」ができるほど独自の世界観をつくりあげている。

同社が強みを持つのは、1万円を超える高級なイヤホン、ヘッドホンだ。高額商品だけに、購入には試聴が前提となる。その一方、同社のレビューに共感を覚えた客は、わざわざ来店しなくてもネットのレビューだけで判断するようになる。

「クチコミ」はネット通販で重要な要素となっているが、その多くは匿名で投稿される。それよりも、実店舗でさまざまな機種を試聴しているスタッフによるレビューのほうが話題になりやすい。実店舗があるからこそ、ネットで客をつかまえられるようだ。

(文中敬称略)

e☆イヤホン
●東京と大阪の2店舗とネット通販で売上高26億円
●海外製品を中心に1000機種以上が試聴可能
●スタッフの独特のレビューで世界観をつくる
(遠藤素子=撮影)
【関連記事】
「ネット通販」勝ち組の研究【2】モノタロウ
「アマゾン」の1人勝ちはなぜ起こるのか
なぜ、試着できないゾゾタウンで服が売れるか
ヤフー無料化で日本のECはどう変わるか
なぜカカクコムの最安店に注文が殺到しないのか