10年で2兆円超の売り上げが消えた百貨店業界では、給与の減額も軒並み大幅傾向に。スーパー、コンビニは、水準をなんとか保ち家電、アパレル、外食も堅調に推移する。

10年で2兆6000億が消滅

低価格の波と国内消費の低迷が直撃
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低価格の波と国内消費の低迷が直撃

高島屋とH2Oリテイリング(阪急阪神百貨店)は、2010年3月に経営統合協議の打ち切りを発表。両グループは「3年以内の統合をめざす」として、08年10月に業務・資本提携に踏み切っていた。

三越伊勢丹ホールディングス(HD)やJ・フロント リテイリング(大丸松坂屋百貨店)の誕生など、合従連衡を進めてきた他の大手百貨店とは対照的に高島屋は当面、独自路線を歩むということだろう。その高島屋の前期の従業員平均年間給与は648万円。647万円だった02年2月期の水準にまでダウンした。

09年の全国百貨店の売上高は6兆5842億円。約9兆円だった1999年から10年余で、およそ2兆4000億円の市場が消え去ったことになる。だが、高島屋を含めて大手百貨店の平均給与は、売上高ほど極端に下降線を描いてきたわけではない。各社とも売上高の10%前後を占める人件費総額を減らしながら、同時に従業員も減少させるというリストラを実行し、平均水準をなんとか維持してきた経緯がある。

高島屋でいえば、02年2月期は、従業員が9462人で、人件費総額は1006億円。それが前期は、従業員5835人、人件費総額は707億円。8年間で約3600人の従業員が職場から去り、人件費も約300億円の減額(単体ベース)。

ただし、そのリストラを含むコストカットも限界にきた。統合後のグループ内体制の整備を急いでいる三越伊勢丹やJ・フロントなども含め、業界再編に加わっていない松屋や近鉄百貨店の大幅給与ダウンが、百貨店の現状を何よりも物語っている。

不振からの脱出が見えてこない百貨店に比べれば、セブン&アイHDやイオンが主要業務として展開しているスーパーやコンビニは、全体としては給与水準を持ちこたえている。

その象徴がイオンの岡田元也代表執行役社長の年俸。1億円超の経営陣の年俸個別開示がスタートした10年3月期以前から額面を公表してきた。4400万円から3900万円に下降したが、前期は5300万円と上昇に転じている。

三菱商事グループのライフコーポレーションの従業員平均給与は、対前年比1万円の微増にとどまるが、5年前に比べると50万円に迫る上昇。その間、従業員も約640人増員しており、従業員個々の昇給もあったはずだ。

総合商社の丸紅、それにイオンの資本参加を得て経営再建中のダイエー。同社の平均給与も上昇基調で、21世紀初頭からはおよそ50万円アップ。ダイエーと同様に丸紅とイオンが大株主のマルエツ。食品スーパーの同社は400万円台に落ち込んだ年もあったが、持ち直している。

もちろん、国内流通二強のセブン&アイHDとイオンにしても、売上高40兆円規模の米ウォルマート・ストアーズの7分の1から8分の1のサイズにとどまるように、流通各社にとっては、規模の拡大と利益率のアップが課題。国内の足場を固める一方で、中国を中心としたアジア市場の深耕が不可欠になっている。