経営者はみんなタガが外れている

まあ、正直に言えば、ビズリーチで語られる「仲間」というキーワードに最初はくすぐったさを覚えたのも確かでした。「仲間で頑張ろう」と真顔で言われると「学生かよ」とこそばゆいですよ。でも、それが日常的に語られていると、当たり前になっていくんですよね。

私がビズリーチに入社したのはいまから3年前のことでした。大学を出た後、最初はJTBに就職して、その後はリクルートエージェント(現・リクルートキャリア)に7年間勤めた上での選択でした。

ベンチャーに飛び込んでみようと思った理由は、30代になって挑戦するならこのタイミングを逃せないと感じたことが一つ、それとリクルートキャリア時代に採用支援でたくさんのベンチャー企業の経営者と会ったことが大きかったです。

新しいことに取り組んでいる人って、どこかタガが外れていることが多いじゃないですか。仕事でそうした人たちに会って採用の話をしていると、決まって事業の話が熱っぽく語られ始めるのですが、どんな経営者も個性が光っているわけです。その姿に憧れてしまった、というところはあったでしょうね。

だって、かたや自分は親も理系の教師で理系の大学を出て、JTBやリクルートで働いていて――。真っ当な人生を歩んでいるとは思うのですが、この先にキャリアを積み上げて行ってもこういう人たちが見ている風景は見えないだろうな、って実感するんです。いま登っている山をいくら頑張って登っても、登っている山が違うので辿り着く場所も違う。でも、人生は向こうの方が楽しそうに見える。そう一度感じてしまうと、何だか寂しいような気持ちになったんですよね。

仕事は当時から楽しかったです。リクルートは個人が信頼されている会社でしたから。リーマンショック前までは転職市場が凄まじい勢いで伸びていました。急拡大している業界で働くってこういうことか、というお祭り騒ぎ。何しろ先輩社員が新しい事業部にどんどん行ってしまうから、私みたいな26歳の新人でも大きな案件を担当させてもらえるんですね。都市銀行の数百名規模の採用支援とか、それこそ日経新聞の一面で語られるような内容の裏側の仕事を担当できた。後半の3年間は希望して新規事業の立ち上げにも携われました。思えばその2つの体験が忘れられない、っていうのもあるかもしれませんね。